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2007年8月

2007年8月 9日 (木)

魔笛

T0005320 昨日、たった半日しかない休みをおして(笑)出かけました。公式へは写真からどうぞ。

 もともと私はこの原作のオペラがとても好きで、「魔笛」を下敷きにしたものならオペラ・映画は言うに及ばず、現代劇・バレエに至るまで、たぶんほとんど全部見ています。アノ実相寺監督が総演出監督をなさった、ウルトラ怪獣総出演のvv「魔笛」ももちろん見て、感動しましたよ(笑)。何で毎回顔をつっこむかというと、その理由の1つに、このオペラの元々の脚本が、ムズカシイというか、解釈が様々に分かれるというか、平たく言うと「なっちゃないのでどうにでもできるシロモノ」だからというのがあります。この無茶な話につけられたモーツァルトの曲は本当に他の作品と並べても群を抜いて美しい。だからこの原曲に立ち会った人たちはまず「あの曲をプレイしてみたい」と思うわけですが、その熱望が先に立ち、いざそれを板の上にのせる段になって、台本の荒唐無稽さに悶絶し、塗炭のクルシミを味わうわけです(笑)。ぶっちゃけ、その「悶絶の成果」を意地悪く眺めて楽しむのが、古今東西「魔笛」の正しい鑑賞法なわけですからvv(そうなのか?) そしてこの映画は、これが「魔笛」初体験の方にとっては、「どんだけお馬鹿な話なんだっ」突っ込みどころ満載!!となるとは思いますが、私に言わせると、非常に良くできているほうです(大爆笑)。今まで「目をつぶっていた所」にも新たな説が(笑)加えられ、目から鱗の連続、本当に面白かったですよ。

 以下ネタばれです・・・っていうか、「魔笛」はよく知っているけどこの映画はまだ、という方に向けてミドコロを解説(笑)。まずペトロヴァは最高、でした。どの歌曲でも、コンサートレベルの素晴らしいコロラトゥーラが堪能できます。「来るぞ、来るぞ!」と身構えて待ちかまえていれば壮大なカタルシスが味わえますv 画面にはちゃちな解釈が現れますが、そんなモノを見事に吹き飛ばす素晴らしい出来。彼女だけはよい意味でこの映画全体を逸脱してしまっていました。反対にパーペは、映画世界の成立を目指すあまり、本領を発揮できていませんでした。たぶん尺の都合なんでしょうが、テンポが、早いんですよ。だからザラストロの重厚長大さ、たっぷりとした大きさ、おおらかさというものが中途半端に終わっている。もっとじっくり楽しみたいのに・・・でも映画的にはそこで長尺になると観客が飽きるでしょうかね。毎回観客の寝どころとなる(こらこら)、弁士と王子のレチタティーボのようなやりとりを、音域が同じとはいえザラストロに変えたのも、キャラの魅力を半減させたかもしれません。ほかに上手かったのは3人の魔女。歌唱力もさることながら、けっしておばちゃんぽくなく(笑)キュートで愛らしくて、なんだかとっても美人の森三中、みたいでよかったですvvそれからパパゲーノ夫妻。映画の中では扱いが軽いですが、その演出にもめげず(笑)この2人の歌は本当に素晴らしかった。彼らの歌を聴いていると、モーツァルトが教会にもフリーメーソンにもない真の幸せの理想像を、このパパゲーノの内に求めた、という巷説が自然と思い出されてきて、じんわり感動します。
 演出上、面白かったのは、かなり誠実に曲を追っているところ。聞いているとこっちは次のフレーズが頭に浮かびますから「え、今こんな画面にしてて、あと8小節したらどうするんだろう・・・」とシンパイ しますが、大丈夫、そこへくれば急転直下チャンとそういう絵に切り替わります(大爆笑)。特に起伏の多いOvertuneの流し方は見事としか言いようがありません。悶絶の跡が楽しめますよvv
 それから、今まで単に聴き所、でしかなかった王子や王女のアリアに、新しく意味を持たせた解釈と映像。絵姿の王女に一目惚れする王子のアリアはテノール屈指の名曲ですから、たいていここへ来れば芝居は度外視して曲に聞き惚れますが、でもよく考えたら、そんな馬鹿な話もないんですよね(汗)。映画ではその美しいんだけどある意味「お花畑」な王子の脳内映像を華麗に展開することで、後の修行に対して深い意味づけをします。さらに、ただ「欲しい」だけでガンバル王子と違い、王女の方は彼について行くに当たり実に様々なモノを「切り捨てる」わけです。いろんな犠牲を払う。その命がけの決別の末に彼女が見る映像、それが、最初の「お花畑」舞踏会シーン、なんですよ。彼女のおかげでお花畑は現実となる。王子の無茶とも思える推進力と、王女の捨て身の理想主義が、お花畑をホンモノにする。それが、この2つのアリアにかぶせられた映像によって、強く訴えかけられているのです。最後に2人でフリーメーソン的試練に立ち向かうシーンも、この解釈のおかげで、とても意味のある、深いモノになりました。主題的には「もののけ姫」を始め、今や様々な作品で語りつくされている感がありますが、それをアノ「魔笛」から取り出して見せた、というのがケネス・ブラナーの面目躍如、といったところでしょうか。

「魔笛」に加えられたもう一つの新しい解釈として、この映画は必見だと思います。そしてこれを見て、皆さんがオペラという「壮大なお馬鹿」を心の底から楽しんで下さるようになれば(笑)、とこれは切に願う次第です。


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