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2006年12月10日 (日)

キング 罪の王

20061013004fl00004viewrsz150x「キング 罪の王」見てきました。 公式サイトは写真からどうぞ。

正直、ガエル・ガルシア・ベルナル目当てに行ったのですが(笑)、アメリカの、特にキリスト教社会の腐敗に歯がゆい思いを抱く人にとっては、文字通り快哉を叫ぶような映画で拾い物でした。「それ、キリスト教とちゃうやん!」と全世界のクリスチャンからツッコミまくられている、現代アメリカの保守的プロテスタンティズムの病巣を、見事にえぐりとった快作です。ひょっとすると、そういう特殊な目的、背景で描かれた映画なので、例えばこのいかにもステロタイプな「病んだ家族」が、「絵に描いたような幸せそうな家族」に見えてしまい、主人公の衝動がうまく伝わらない人もいるかもしれません。この映画は、この現代アメリカに深く巣食う病巣を、あくまで「この家庭の問題」ではなく全米に対する象徴的な寓話、警告として発しているので、個々の人間はその記号としてしか描かれていません。でも私に言わせると、これがかの名作「デッドマン」に対して、アメリカ社会が首うなだれて差し出してきた答え、なんだろうと思います。多民族国家の坩堝アメリカを「人類の壮大な実験」とうそぶく一握りのノー天気な人たちは、その抱え込んだ矛盾を隠蔽するばかりでついに修正する事なくココまで来てしまった。その結果、ジョニー・デップ扮するブレイクが「出てきた世界」の方が、自らの病巣をやっと直視せざるを得なくなった、わけです。

 ココから先はネタばれですが。
 例えば彼らの信仰によれば、銃で身を守る事、狩猟を楽しむ文化はキリスト教とは「別次元」の話です。何でそこで都合よく信仰を忘れてしまえるのか、部外者には本当に永遠の謎ですが(笑)。映画ではさすがにアーチェリーに変わっていましたが、仕留めた鹿の始末を妹にさせながら自分の弓の事しか気にしていない兄の無神経さ、あるいは主人公を家に迎え入れるにあたって、まるでやくざの兄弟仁義のようにアーチェリー場で「ともに汗をかこう」とする父の、コミュニケーションの節約(^_^;)は、彼らの中では開拓者精神にのっとった「かっこいい男」でしかありません。それから自分の夫に過去に女がいて、その人との間に子供がいて、(子供の肌の色で)その相手の女性がヒスパニックだとわかった妻が、その3つの中で1番ショックを受けたのは「ヒスパニックに触れた手で抱かれた」という事実です。ふつーに考えるとそれは人種差別以外の何ものでもなく、彼らの掲げている「主の下にあっては人類はみな兄弟姉妹」の人類は実はWASPでしかない、というのがここで露呈します。ほんとうはそういう弱いところがあってこそ神に愛される人間、の筈なんですが、普段から「博愛主義」を標榜し自分の感情を押し込めているせいで、こういう時生理的な拒否反応しか出てこないんですね。そっちのほうがよほど救いようがないと思うんですけど。それから主人公とその家の女の子の恋愛も、まるでロミオとジュリエットのように(笑)実に美しく、そして丁寧にたどられる恋、なのですが、その描写が丸ごと「性欲におぼれてはならない」という彼らの掲げる金科玉条へのアンチテーゼになっています。まあ妊娠はヤバいでしょうけど(^_^;)あのうっとりするほど幻想的で美しい映像を見ていると、コレのどこが淫らでいかがわしいんだか、アレはいけない、コレもいけないとその行為のいちいちをチェックしようとする目の方が、よほどヤらしいのではないかと思ってしまいます。 
 

 主人公は、自分達が兄妹であると隠し通しながら恋を成就させ、そのために弟を刺し、さらに罪を重ねていきますが、ガエル君はそれがごく自然な恋情からほとばしり出たものでも結果的に立派な復讐となっている、という厚みのある役どころを文字通り怪演しています。もしイエス・キリストが生きていたら後ろから飛び蹴りくらわしそうな「ご立派な」牧師に比べ(^_^;)、主人公の行いには微塵も卑屈なところがなく、実に清々しく正々堂々として見えますが、それはガエル君の強く美しく澄んだ瞳のおかげもあると思います。「かわいそうな私生児」である彼に思いっきり肩入れして見ていれば、映画の趣旨をあやまたず捕える事が出来ると思いますが、その意味でも彼の美しさは重要でした(笑)。

いやもう、あのセーラー服は反則ですって!!!!


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コメント

こんばんは。
ガエルくんのマリンルックはらぶりーでしたね♪

>1番ショックを受けたのは「ヒスパニックに触れた手で抱かれた」という事実

というのには気づかなかったです。なるほど・・・
キリスト教的には罪じゃないにしても、平然と狩猟をする姿にはゾゾッと・・・。
そういうのも、開拓者精神からのものと言えるのですね。
いやー、興味深くて魅惑的な映画でした。

投稿: かえる | 2006年12月11日 (月) 22時34分

かえるさん、コメント有難うございますv

いや、あれも立派な大罪ですけど(笑)っていうかこの映画ってキリスト教的に言うと、各所にチクリチクリと嫌味満載、ふと振りかえれば地雷炸裂(笑)のたいへんイケズな映画なのですが、
大事なのは、それがガエル君のおかげで「教義を越えて」「感覚的に何となく」でもしっかりと、皆さんに伝わっているという事だと思います。よく考えるとこれって凄い事だと思いませんか。
かえるさん書いていらした通り、私もこの役がもしガエル君でなければ、ここまでストレートに監督の思いは画面に溢れて来なかっただろうと思います。

そしてあのセーラー服がある限り、この人は私の中ではガエル「君」に決定です(爆)

投稿: contessa | 2006年12月11日 (月) 23時16分

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救いようのないダークな物語なんだけど、映画としてはすこぶる気に入った。 海軍を退役した21歳の青年エルビスは、亡き母から聞かされていた父親デビッドに会うため、テキサス南部の小さな町を訪ねる。ガエルくんの役者根性は素晴らしい。世界のファンを夢中にさせるような好青年役ではなくて、観客が感情移入できないような非道なアンチヒーローになりきってしまうのだから。主人公エルビスは何を考えているのかよくわからない、不気味な男なんだけど、それはガエルくんの悲しげ子犬キャラのせいか、脚本や演出の巧妙さなのか、被害... [続きを読む]

受信: 2006年12月11日 (月) 21時03分

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