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2006年12月 1日 (金)

訃報

テレビの「ウルトラマン」シリーズや映画「帝都物語」で知られる映画監督の実相寺昭雄(じっそうじ・あきお)氏が11月29日午後11時45分、胃がんのため都内の病院で死去した。69歳。東京都出身。喪主は妻知佐子(ちさこ)さん(女優原知佐子)。  早大卒業後、ラジオ東京(現TBS)に入社。60年代に「ウルトラマン」などの演出を手掛け、独特の照明技術を駆使した陰影のある映像で、日本の特撮映像の第一人者となった。69年に「宵闇せまれば」で映画監督としてデビュー。TBSを退社して実相寺プロを設立し、情緒的なエロチシズムの中に人間の本性を描いた「無常」でロカルノ国際映画祭グランプリを獲得した。  88年には作家荒俣宏さん(59)の幻想小説「帝都物語」を、05年には京極夏彦さん(43)の「姑獲鳥(うぶめ)の夏」を映画化。70年代に演出した特撮番組のリメーク映画「シルバー假面」を完成させたばかりだった。  オペラの演出も手掛けたほか、著書に「星の林に月の舟」「ウルトラマン誕生」などがある。東京芸大名誉教授で、鉄道ファンとしても知られた。「ウルトラマン」でヒロインを演じた桜井浩子(60)は「特撮よりも人間を主体に撮って、映像にも手作り感がありました。監督の精神は後の世代に引き継がれていくと思う」としのんだ。

(日刊スポーツ)


監督のご逝去を心から惜しみ、ご冥福をお祈り致します。
世に反骨、反逆の士は星の数ほど登場し、もはやそれだけでは珍しくもかっこよくもなくなってしまった昨今ですが、そのアバンギャルドが後の世に「古典」として残るほど筋の通ったまともな「反逆」を完遂した人を、私は数えるほどしか知りません。その1人がモーツァルトであり、忌野清志郎であり、この実相寺監督でした。
私がこの監督を心の底から敬愛するのは、人間はうすぎたなくエロくどうしようもなく情けない存在である事を知り尽くしていながらなお「しょうがねぇなぁ」とでも言いたげな、優しいまなざしを人にむけ続けている所です。変身スティックのかわりにスプーン突き出しちゃったハヤタ隊員も、美しくも淫猥な老醜も、帝都の底にのたうちまわる咆哮も、消されゆくもの達の叫びも、宇宙の墓場に連れられていった怪獣も、一見奇を衒った只の意匠にしか見えなくても、それはただの思いつきやカッコつけ、破れかぶれや行き当たりばったりでは決してなく、監督の中ではきちんと最後まで出来上がっている世界の一部でしかないのであり、そのどこをとっても「正統」なのです。
 だから、クラシックオタクしか知らない事かもしれませんが、監督の演出するモーツァルトのオペラは本当に素晴しかった。あれほど確固たる宇宙を築き上げなければモーツァルトには太刀打ちできないのか、という意味で目から鱗でしたし、当時の反逆児の代表格だったモーツァルトは同士を得たとばかりに天界で快哉を叫んでいたかもしれません。

 監督の人並み外れた度量の大きさからくる、「人」への慈愛に満ちたまなざし。怪獣の行く末に涙し、ハヤタ隊員の苦しみに心を寄せ、監督を通して、人の心の奥底に息づく温かさを肌身に感じて育ってきた私達は、本当に幸せだったのだと思います。この正統が長く後代に伝えられていく事を祈りつつ。



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