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2006年11月23日 (木)

「叫」

 一般公開に先駆けて「東京フィルメックス映画祭」で公開されましたので見てきました。日曜日に見て、今頃感想書いて申し訳ないです。あと、映画の前には舞台挨拶が、終わった後にはティーチ・インがあって、例によってメモ取りましたので、もしご希望があれば公開します・・・月末までちょっと忙しいので期日はお約束できませんが、頑張りますので。

 ホラー映画という触れ込みでしたが、どっちかと言うと心理ミステリーのような映画です。そして監督が「怖さ」をあらわす記号として使っている意匠が、斬新と言えば斬新なんですが、時々ちょっと踏み外してしまっているので、そのぽっかりあいた隙間から笑いがこみ上げてきてしまいます。何だろう、まるで小さん師匠が「牡丹灯篭」やってるような、上手いんだけれど全然怖くないし違和感ありまくり、といった類の居心地の悪さなんですよね。しかもいったん切れた緊迫感というものはなかなか張りなおすのが難しく。実際に舞台の袖で監督がご覧になっているのがわかるだけにいっそう居心地悪く気を遣ってしまったのですが、さて・・・失笑や苦笑に聞こえない事を祈るばかりです。
 私的には、押し込められたものの「叫び声」が一切の湿気もどろどろも排除した、からりと冷えた金属質な「音」だったのが、面白かったです。いわゆる怨念めいた「温度」というものがまったく無い音。更にいうなら、例えば女性というものを「理解」できずに手をこまねいて立ちつくす少年のように、その怨念を前にしてただひたすらカメラを回し続けるだけの監督が、とても可愛くもあり、またその誠実さに感心もします。あの、大変に暗い色調なのに、クリアで、まぶしいくらいにコントラストの強い映像が醸し出す不思議なバランスが、相変わらずこちらを引き付けて離しませんで、この「異質感」を生かすには、やっぱり幽霊とかミイラとかの話になってしまうんだろうなぁと、変なところで改めて納得したりもしたのですが。

 で、あえていいますが、その微妙に途切れそうで何とか踏み堪えていた映画の最後の一線を一人で見事にぶち抜いてしまったのが「霧山修一郎」でした(T_T) いや、何かもう、並みの監督なら「金輪際オダギリジョーは使わねぇっっ」と固く心に誓いそうなほど超弩級の破壊力、だったんですが、黒澤監督はどこかでそれを楽しんでいるふしがある・・・(ように思えるのは一部ファンだけ?) とにかく蛇に睨まれたかえるのように裏返った声で硬い芝居を続けるオダギリ氏は、それが演技なのか素なのかはひとまず置いておくとしても、映画的にはマスコット、もう格好のおもちゃとして玩ばれておりましたよ。ご一緒した方のお言葉を借りれば。場内まるで吉本のようにドッカンドッカン笑ってましたし(^_^;)、時効警察も難波花月も絶対知らないハズの私の周りのガイジンまでが、思いっきりデカい声で呵呵大笑しておりましたから、その破壊力たるや推して知るべしであります。頑張れオダギリ氏っ!久しぶりに霧山に会ってみたい方には是非お勧めします(殴)。

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コメント

contessa様、お邪魔致します。何を今更!な時期にフィルメックス&『叫』のコメントすみません(タイミング無視の女・笑)
さて『叫』、様々な意味で(笑)大変興味深く鑑賞致しました。上映会翌日多くの友人よりメールあり、ワイド・ショー等で紹介されたのか、皆さん一様に「結構怖そうだった~」とか「一体どんな展開になるの?」etc…『叫』=「ホラー」の誤った(笑)図式が出来ておりました。
が!しかぁ~し!(笑)ネタバレはしませんが、当日の会場(朝日ホール)は、此処は「ルミネ・ザ・吉本」かっっ!(笑)っていう程の大爆笑がわきおこっていましたね。
ティーチ・インの最初の質問に「ジャンル映画云々…」がありましたが、そもそも映画をジャンル分け・カテゴライズする事は無意味と思っている私故『叫』が「ホラー」だろうと「コメディー」だろうと(←んな事誰も言っとらんわっ!)「黒沢ワールド」でいいじゃん!な気持ちでおりました。
そういう意味では、完全なる「黒沢ワールド」を展開した(筈だった・笑)『叫』はとても堪能出来たのでした。
再・が!しかぁ~し!(笑)靴に入った小さな石ころの様に「黒沢ワールド」のトーンにかなりの違和感を感じさせる、特に2シーンに出演した某役者(笑)が、全体のバランスを思いっきり崩してくれた事に、相当ムカつきながらも、こみ上げる笑いはあらがいようもなく、誰より大声上げて爆笑し…(あえなく撃沈…)
あれだけ受けといて言うのもなんですが、そこがcontessaさんのおっしゃる様に海外のお客様、プレスの方々迄巻き込む爆笑シーンだったとすると、今更ながらに「ベネチア国際映画祭」の時は、上映中会場がどのような様子であったのか、詳しく知りたい気持ちになりました。
あの某役者は「確信犯的」に演じていたとはとても思えず。尊敬し、敬愛する黒沢監督の前で、緊張のあまり演技がフリーズしたとしか…(何で4年前に戻ってんだよっ!)
黒沢監督は、現場でも紳士で、優しく、淡々とした物腰の様子。只単にそいつ(笑)が小心者だったという事でしょうか?
あのシーンは後のストーリーに関わる伏線も張られており、とても重要なシーンであったと思いますが、そのまま採用してくれた黒沢監督の某役者に対する深い愛を感じます(いや、単に予算の問題か?・笑)私が監督なら撮り直しをするか、バッサリ役者交代させてました。
他の役者さんは皆さん素晴らしく「黒沢組」に成り切っていたし、映像・美術・ロケに採用された建物も「黒沢ワールド」そのものでした。
以前contessaさんに、私が前作『LOFTロフト』を観た時「消化不良で、今一つピンとこない」旨お話ししましたが、『叫』を観て点と点が繋がり、心から納得出来ました。
黒沢監督は人をびっくりさせたり、驚かせたりが目的では無い為、ある意味コアなホラー・ファンには物足りなさがあるかもしれません。しかし反対に私は様々な作品を観るにつけ、人間の生理の1番触れられたくない部分をチクチク刺激される様なイヤーな感じを体験し、それは「貞子」の100倍も怖い、ジワジワとからめとられる様な恐怖感です。
前作『LOFTロフト』の時、黒沢監督は「初めてラブ・ストーリーに挑戦しました」と語っておられました。『叫』でも主人公とその恋人の関係は重要なファクターとなって、ストーリーを形成します。
そこでこの2作品にが持つ共通の恐怖として現れるのは、ミイラや幽霊では無く、「生身の女」その物で、それらが持つ生理或いは本能に対する、男性側からの恐怖なのではないでしょうか?その象徴としてミイラや幽霊は「生身の女」を記号化した役割を担う。
「愛」「永遠」「宿命」「絆」「運命」といった言葉を聞くだけで、大方の男性はドン引き(笑)すると思いますが、そういった形無きものに執着し、それを言葉で、契約で、男性に誓わせ、縛りつけ、からめとろうとする「生身の女」、それに比べたら、記号化されたミイラや幽霊など、この世に存在しない分、かえって愛おしいくらいだ…というような黒沢監督の女性に対する生理的な恐怖感、不信感を感じ取ってしまうのは、深読みのしすぎでしょうか?
その辺りをティーチ・インの時、女性の方に質問して欲しかったですねぇ。質問者は全員男性でしたので…
黒沢監督、青年期から現在に至る過程で、女性で相当痛い目に遭ったとか(笑)女性は不確実なものを欲しがり、詰め寄る困った生き物なんでしょうかねぇ。女性側からは大ブーイングが起こりそうですが(笑)
げに恐ろしきは生身の女なり…

投稿: 堕美庵 | 2006年12月 3日 (日) 03時21分

堕美庵さま

いえいえ、コメントをリアルタイムでつけなくてもいいのが、掲示板にはないブログの良さなんですから、お気が向かれましたらいつでも是非宜しくお願い致します。

さて、映画未見の方に一言。堕美庵さんと私が口を極めて罵っている(笑)この某役者というのはマチガイなく「オダギリジョー」でございますm(_ _)m 映画ご覧になれば出てきた途端に「ああ~」とわかっていただけると思いますが(泣)、もし他の役者さんに迷惑がかかるといけませんので念の為(笑)

>人間の生理の1番触れられたくない部分をチクチク刺激される様なイヤーな感じ
ああ、感受性の強い方にはイヤーな感じ、なんですね・・・私は鈍なもので、本当にまったく怖くなかった(泣)家に帰って考えてみたんですが、「怖さ」をあらわすのに監督が使っていた、あの古典的なまでにステロタイプな映像の数々は、ひょっとしたら「怖さ」を記号化することによって克服しようとしているんじゃないでしょうかね。夜トイレに行けない少年が良く使う手です(笑)

少年つながりでもうひとつ。女性というものを「理解」できずに手をこまねいて立ちつくす少年、という監督像は、黒澤人気のひとつのファクターであろうと私も思います。非常に精緻に知的に整理されてはいますが、その心象風景は例えば三池崇史監督などと近しいものなのだということが最近お2人の対談を読んでわかったのですが。だとすれば、その描き出される「少年の風景」に対する憧れが、大人の男をひき付けてやまないのではないかと。現代のフェミニズムに偏りすぎた風潮の中ではなかなか言い出せない、性としての男性の弱く繊細な部分を巧みに表現してくれるところに、世のおぢさん、おにいさんたちはほっとし、心の内に開放感を味わっているのではないかと、そんな風に思います。どんな人でも心理的には両性具有であると思いますが、私も黒澤さんの映画見てる時にはオヤジになりきっていますからね、いつも(笑)。

公開されたら、さて何と言って人にご紹介したら良いのか難しいところですが(笑)中崎タツヤとか吉田戦車の愛読者なら、いい意味でこの映画を堪能できるんじゃないか、とオバサンは思ったのでありました。

堕美庵さんのレビューは毎回いろいろ指摘して下さり考えさせて下さって、本当に面白く、また有難いです。また是非書いて下さいませvv有難うございましたm(_ _)m

投稿: contessa | 2006年12月 3日 (日) 20時01分

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受信: 2006年11月25日 (土) 18時32分

» 『叫(さけび)』 [ラムの大通り]
※カンの鋭い人は注意。※映画の核に触れる部分もあります。 鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。 ----これって黒沢清監督の映画だよね。 つい最近、新作『LOFT ロフト』が公開されたばかりじゃニャい? こんどもホラーみたいなタイトルだけど? 「今日のマスコミ完成披露試写では 黒沢監督がインタビューに答えて 『これがどういうジャンルに属するはぼくにも分からない。 最後まで幽霊と人間の葛藤�... [続きを読む]

受信: 2006年11月26日 (日) 10時12分

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旅日記その4。 [続きを読む]

受信: 2006年11月26日 (日) 16時45分

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こんにちは、ダーリン/Oh-Wellです。 いやはや、実に久々の更新です。・・・そう、あの『時効警察』〔◆公式サイト|※下Ph〕もおよそ一年ぶりに帰ってきた((^^)訳ですからね、僕も久々に更新いたしますヨー!(笑) そう...^^、私め、この4月の始め頃までは仕事の方も家庭内もあれこれと忙(せわ)しなく、ひと段落したらひと段落したで、しばらくはブログの更新よりも休息なり遊びなり家族なり^^を最優先させておりました、はい。そう、この4月は、映画館での新作映画鑑賞なども今年これまで... [続きを読む]

受信: 2007年4月23日 (月) 01時01分

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