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2006年10月 7日 (土)

フラガール

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「フラガール」見てきました。公式サイトは写真からどうぞ。

「三丁目~」見ても全然ピンとこなかったという友人が、絶対お勧めだというので行って来ました。確かにこれは似て非なるもの、子供と一緒に見に行ったのですが、見終わった後その足で誰かに勧めたくなりました。

 もう一人別の見に行った方とお話したのですが、私とその方がウッと胸を衝かれたのは、映画始まってすぐ、のことでした。最初に「昭和40年」と字幕が出るのですが、その後繰り広げられるいわきの町の風景が、見れば見るほど目を疑うようなものばかりだったからです。昭和40年なら、今上陛下のご成婚はとうに過ぎ(カラーテレビ普及)、東京オリンピックも終わって(首都高完備)、我が家でもさすがに洗濯機も車もテレビもありました。父の転勤で私は小学校に上がるまでに5回、上がってから3回引っ越していますが、その間に巡った関西・九州の各都市でも、お友達の家はどこもみんなそんな感じでした。ヤクルトおばさんも自転車じゃなくてスクーターで配ってくれていたし、幼稚園に行くまでの道に、土がむき出しの道路なんてなかったし。だから、その「クラブ進駐軍のセットか」とみまごうばかり、戦後20年経ってもまるっきり戦後のまま置き去りにされている町の様子を見た時、たぶん登場人物より何倍も切実に「このままじゃダメだ」という危機感を感じていました。外の世界が、どれだけスゴい事になっているか、知らないから暢気に炭鉱に固執していられるのだとしか思えなかった。いくら命がけの仕事と言われても、そこまで採算度外視ならもう趣味としかいいようがない、それほど非現実的な貧乏でした。李監督が何でこんな楽しい映画を撮るのか見るまでは分からなかったのですが、この「置き去りにされた人々」の、それでも生きていくしかないその切実さは、確かに監督でなければ描けないものでした。

 フラガールたちは、家のため、自分の活路を開くため、という切実な事情でこの世界に飛び込んできた子ばかりです。しかしいったん練習に入れば単純に、きれいな服が着られて嬉しい、踊りが楽しいとキャーキャーいいながら笑いあう、そのあたりが実に素直なんですよね。その若い女の子らしい喜びが、だからこその力強さが、見ていて嬉しかったです。義理と意地では世の中は変えられない、という李さんのメッセージは、後半冨司純子さん演じるお母さんの口を通して語られますが、そこに至るまでの彼女達の、欲も得も無い、ただ「踊りたい」というだけのキラキラした瞳は、本当に世の中を変えていく力を持つものでした。南海キャンディーズのしずちゃんは、「ゆれる」を見に行くたびに強烈な(笑)予告編見せられるので物凄いインパクトありましたが、本編でも、綺麗な女優さんが多い中、1人だけ強烈にリアリティがあり(笑)、その朴訥さが「ああ、本当にこういう子がいたんだろうな」と後半涙を誘います。そして李監督、そのあたりは遠慮なく容赦なく暴ききりますから救いようがないんですが、最後の最後に、鳥肌の立つような華やかな舞台で、主人公の蒼井さんが、その全てを解き放ちます。それまでふれられる事のなかった、この舞台を作らなければならなかった人たちの思い。そして今彼女達を支えつつ消えて行く運命にある人々の思い。それらを全てうけとめて「やってやろうじゃないの」と火を噴くような目で、時代の波にくらいついていく、その顔。たった一瞬のその顔。その後は明るく華やかな彼女たちの懸命のステージが繰り広げられ幕を閉じますが、私にはその顔が、その蒼井さんの顔が、忘れられませんでした。李さんがこの映画で撮りたかったのはこれなのだと思って、後から胸が熱くなりました。何の邪心も無い「ただ踊りたい」だけだった彼女達を「死と再生の女神」に変容させたのは、積み重ねられ積もりに積もった人々の「思い」、李さんの祖国の言葉でいえば「恨」であったのだと、思い知らされたからです。

 彼女達の、屈託のない楽しそうな笑顔にはほんとうに癒されます。常磐ハワイに行った事のある方もない方も(笑)ぜひどうぞ。

 

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コメント

こんにちは。明日娘と観に行こうと思ってます。でもその前にJR田町駅のウィダーステーションのポスターオダギリ氏に逢いに行きますけどね。(笑) 昨日小学校の運動会で一致団結する美しさに感激したばかりなので(手前みそですが…)、大笑いして大泣きするのを覚悟で臨みますよ~!! 李相日監督インタビュー面白かったので良かったらどうぞ。ではでは。http://www.cinemacafe.net/news/cgi/interview/2006/09/785/

投稿: miri | 2006年10月 8日 (日) 11時08分

contessaさん、こんばんは!
丁度明日、この映画を見に行く予定なんですよ。
ますます期待が高まりましたv
『69』でも『スクラップヘブン』でも、この『フラガール』でも、李監督は“世の中を変える力”が何か…をずっと模索され伝えようとされているのかなぁと思いました。

投稿: luckystriker | 2006年10月 8日 (日) 18時40分

miriさん、こんばんは~
コメント有難うございますv

>ウィダー
私はアノ三つ編みにノックアウトされましたよ!!「約束してたっけ?」はリアルオダギリ氏の武勇伝にも散見されるせりふだった気が・・・(笑)
>大笑い・大泣き
泣かすポイントが、いわゆる「泣かせる」ドラマに比べるとずいぶんあっさりしているんですが、その分コタえるんですよ。お嬢さんならほんとに喜ばれると思いますv 是非李さんの術中にハマッて下さい!

投稿: contessa | 2006年10月 8日 (日) 22時46分

luckystriker さんこんばんはv
コメント有難うございます。
明日、見に行かれるのですね~

>世の中を変える力
上で長々と書いた蒼井さんの顔を見た瞬間、私も「ああ、テツだ」と思って、切なくなったんですよ。李さんは、人の表情に「託す」監督さんなのかもしれません。
話はベタなスポ根のはずなのに、ヤラれます(笑)どうぞ楽しんでいらして下さいvv

投稿: contessa | 2006年10月 8日 (日) 22時55分

こんにちは。私も見てきました。contessaさんと全く同じ感慨を持ちましたよ。とりわけ印象的だった少女の虫食いだらけのセーター、貧困の切実さが伝わってきました。そして圧巻のフラの踊り。踊りの見事さもさることながら、すべての女の子たちの、あの美しい笑顔にやられました。実話の少女たちも、映画の女優さんたちも、短い期間でどれだけ必死に練習したことかと、そのことにも涙がこぼれてしまいました。自分のブログにもちょこっと書きましたけれど、どなたかと分かち合いたくて、コメントさせていただきました。

投稿: すいっち | 2006年10月10日 (火) 09時09分

すいっちさんこんばんはv
コメント有難うございました。

そうですか、セーター、穴あいていましたか(涙)も一回見に行こう・・・

彼女達の笑顔は、我知らずものすごく大きなものを見事に呑み込んだ上での笑顔、なんですよね。それがあんなにも清々しいなんて、本当に、凄い事だと思います。

私も、見終わった後、こんなに「話したくなる」映画は久しぶりでした。すいっちさんともお話できて、おかげさまでまた新たに感動ですvvホントに有難うございました。

投稿: contessa | 2006年10月10日 (火) 22時34分

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