« こおろぎ | トップページ | HAZARD 舞台挨拶っ! »

2006年10月28日 (土)

百年恋歌

Top_1 「百年恋歌」<最好的時光>"Three Times"見てきました。公式サイトへは写真からどうぞ。

 1911年、辛亥革命前夜の台湾から、2005年の台湾までの約100年の時の流れの中に浮かぶ、3組のカップルの「想い」を描いた作品。同じ俳優が演じていますが役柄としての関連はありません。侯監督最新作です。

 原題が日本語、英語、中国語と3つあるんですが(^_^;) 中国語の題「一番良かった頃」がやはり一番しっくり来るように思います。一話目(1966年前後)と二話目(1911年前後)は特に、画面のこちらでそのシーンを懐かしく思い出している「第三者」の存在を強烈に感じさせる、独特のカメラワークです。誰かの頭の中にだけ残る映像を美しく取り出して魅せたようなショット。その恋をしていた時にはわからずにいた、でも今も強く心に焼き付いてはなれない何気ないしぐさ、ふとした表情、そしてこちらにまっすぐに向けられていた瞳・・・取り出されて来る一つ一つのシーンの、その完成度の高さにはため息しか出ません。それを見て、状況も設定も全く違う自分の中の「一番良かった頃」が切々と思い出される人も、いるかもしれません。そしてこの二つの話を監督は、小気味良いほど確固たる姿勢で迷うことなく撮っていて、そこに少しの迷いも不安もなく、観客は何も考えずすべてをあずけてその世界に酔いしれる事が出来ます。特に第二話、まるで川端康成の小説のように、硬くひそかに閉じられた世界の中に繰り広げられる、この上なく繊細で美しい人の心の綾なす織物。手をふれたと見る間にはかなく脆くくずれさっていったその錦紗は、彼らの身の内を焼き滅ぼすかのような激しく強い想いによって、さらにその残像を輝かせていたのでしょうか・・・あの胸かきむしられるほど激しい「恋歌」に応えて余りある、青年の「絶句」。私は自分がこっちの世界に帰って来れなくなるんじゃないかと思うほど(^_^;) 陶酔しました・・・

 でもたぶん、この映画の中で一番高く評価されるのは第三話、でしょう。映像の美しさでは今更何も言う事はない侯監督の、もうひとつの魅力、「火事場の馬鹿力」とでも呼びたくなるような(^_^;)突発的な、たぶん監督も意識していないとてつもない底力が、この話では映像のそこここからぶぁーーーっと溢れ出て来ているからです。何となくイメージで、静かな穏やかな監督・・・とか思っていると、時々こうして後頭部をグワンとしたたかに殴りつけられるのですが(笑)、侯監督の凄さはまさにこっち、なのでしょう。どうしてこんな絵が撮れるのか。っていうか、どうしてこのシーンが「こんな風に」見えてくるのか。ふっつりと切られた映画の最後同様に、監督は「まだ続く」、は、本当に嬉しくもありますます楽しみでありました。

 そしてこの映画を背負って引っ張っていっているのは確かに舒淇さんの方で、彼女はその重責を見事に果たしていましたが、私はもう張震氏に目が釘付けでした(^_^;) あの「ブエノスアイレス」で忘れられない「不思議な青年」が、何と素敵な俳優さんになった事でしょうか。こんなに美しいのに、衒いも気負いもなくまっすぐに「市井の人」を演じきる、その性根の座った役者魂にはびっくりです・・・うっとり。今度彼が、囲碁界の革命児「呉清源」を描いた映画に出るんですが、きっと、まるで仙人のような「普通の若者」を、存分に魅せてくれることでしょう。楽しみです~~~


<追記>
10/29まで、ここはお留守にします・・・出先からは投稿はできても、TBもコメントも受け付けられません。申し訳ありませんm(_ _)m

|

« こおろぎ | トップページ | HAZARD 舞台挨拶っ! »

コメント

なるほど。「第三者」の存在かー。
とにかくマジカルに美しい世界でした。
チャン・チェンは「呉清源」でローマ映画祭でノミネートされていたようですね。
『カップルズ』を観た頃は、認識していなかったけど、その成長がやっぱり嬉しいです。

投稿: かえる | 2006年10月31日 (火) 00時59分

>マジカル
・・・ほんとですね。何かの妖術にかかってしまったかのような、不思議な余韻が残る映画でした。

>「呉清源」
この人自身も私はとてもとても尊敬しているので、これはもうドキドキするほど楽しみですv 情報有り難うございました。

投稿: contessa | 2006年11月 1日 (水) 14時15分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/103190/12454295

この記事へのトラックバック一覧です: 百年恋歌:

» 『百年恋歌』 最好的時光 [かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY ]
美しい時間たちに耽溺。 1966年、1911年、2005年の三つの時代の男女の交流模様。初めは、『めぐりあう時間たち』や『アモーレス・ペロス』のように、三つのドラマはやがて何らかの形で交わったりする構成なのかと思っていた。実際はそうではなく、それぞれは独立した物語であった。 それらの男女は全て、同じ俳優、スー・チー(舒淇)とチャン・チェン(張震)によって演じられる。それはまるで彼らが、出逢って愛し合うために何度も生まれ変わっているかのように・・・。それぞれには繋がりも何もないのだけれど、... [続きを読む]

受信: 2006年10月31日 (火) 00時40分

» 「百年恋歌」:御徒町バス停付近の会話 [【映画がはねたら、都バスに乗って】]
{/kaeru_en4/}ここが、アメ横にある台湾料理の店だ。 {/hiyo_en2/}なんだかディープなところにあるのね。迷路みたいなところじゃない。 {/kaeru_en4/}台湾の映画監督ホウ・シャオシエンもここのところ迷路に迷いこんだ感じだったけどな。「珈琲時光」なんて、小津安二郎生誕百年記念とか言ってたけど、どこが百年記念だったのか、全然わからなかったもんなあ。 {/hiyo_en2/}こちらの... [続きを読む]

受信: 2006年11月 1日 (水) 22時17分

» 映画:百年恋歌(最好的時光) [駒吉の日記]
百年恋歌@シネスイッチ銀座 「手紙をかくよ、ここ宛に」 「トリスタンとイゾルデ 」で西洋のラブロマンスに浸ったので今度はオリエンタル・ラブロマンス(原題:最好的時光)に。 3つの時代(国民党支配下の1966年、辛亥革命前の1911年、現在2005年)の恋人達。それ... [続きを読む]

受信: 2006年11月 6日 (月) 14時39分

« こおろぎ | トップページ | HAZARD 舞台挨拶っ! »