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2006年10月 9日 (月)

非情城市

200609011234421

 シネマヴェーラ渋谷で行われている、侯孝賢監督特集で「非情城市」見てきました。映画館のサイトへは写真からどうぞ。

 もう何回見たか、という映画ですが、掛かっていれば行ってしまうんですよね~、私にとっては特別な作品です。
 トニー・レオン演じる林家の四男の美しさは言うまでもありませんが、昔見た時にはわからなかった長男の「生き様」が、中国とも韓国とも、もちろん日本とも違う彼らなりの義理人情の切り方・通し方が、今はとても目を引きます。それと、劇中で彼らが「上海語」と呼ぶものを昔は北京官話だと思っていたのですが、別にそういうものがあると最近知りまして、今回は福建とあわせて3種の言葉の「使い分け」にも耳動かしてみて、なるほどと思うところがいくつもありました。

 でも見る度にこちらの居住まいを正させるのは、侯監督がこの映画で世に問うた「物語る方法」です。四人兄弟のうち三人が登場し、四男の友人も登場し、それぞれが過酷な運命をたどり、そのどの人生の主にも「言いたい事」があるのにそれはあえて描かれない。描かれていないけれども「何が言いたかったのだろう」と一歩踏み込む観客のためにはきちんと道標が置かれている。つまり描かない事で観客を突き動かし、揺さぶるんですね。ちょうどこの四男が、何も聞こえない、しゃべらないのに、人々の方から彼に聞き入り、彼に語りかけてくるのと同じように・・・自分の言いたい事もわからないままに、饒舌に、思いついたままを積み重ねる映画が多い中、この監督の「把握しきる度量」と「描くための哲学」は本当に独自のものだと思います。そして侯監督は小津安二郎を敬愛していて、このアジア独特の「引き算の美学」も小津から学んだと言っているらしいですが、私は申し訳ないのですが小津さんにはそれほどの感興は覚えないんですね。侯さんの方がよほど肝が据わっていて思い切りがよく、見ていてわかりやすいし気持ちがいいです。ガイジンから見たら十把一絡げで、同じ「アジア映画」、なんだろうと思いますが。

 トニー・レオンの「子犬のような瞳」がもっとも良く生かされた作品だと思います。現在の中台関係の濫觴となった、台湾の「激動の4年間」を凝縮した佳品としてもお薦めします。

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