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2006年9月11日 (月)

ユナイテッド93

324192view004「ユナイテッド93」見てきました。公式サイトへは写真からどうぞ。

 9月11日の今日見に行きましたら、さすがに超満員でした。5年前のこの事件を通して、世界は「何を」考えなければならないか、を提示した映画です。

 今年はドキュメンタリーに秀作が多い、と先日書きましたが、これはドキュメンタリー「タッチ」で描かれてはいても、ドキュメンタリー映画ではありません。生存者は一人もいないから、本当には何が起こったか誰にもわからないからです。しかし映画は、当時の関係者等へ綿密な調査を行い、わかる部分は事実に忠実に再現した上で「事実の向こうにある真実」を暴き出す事に精魂を注いでいます。結末は世界中が知っています。でもその結末から受ける衝撃が、この映画を見るときっと変わると思います。この映画の「映画的真実」が、起きた事実の持つ「意味」を、もっと広く深く模索し始めるきっかけとなるからです。

 たとえば私は、最初の方で、テロリストの一人が電話に向かってつぶやいた「愛してる」という一言が、今も耳について離れません。映画では、だんだんと見えてくる緊迫した状況下、管制官も乗客もどの登場人物も、打つ手がなく時間もありません。彼らは一様に自分を励まし、自分を信じ、出来る限りの事をしながら、その自分に出来る「限り」のむなしさに愕然とします。しかしそのすべてに絶望を感じ始めた時、この飛行機に「最初から絶望を抱いて乗った人たち」の、その哀しみが、すっ とシンクロして来るのです。彼らの言う「愛している」は、実はただ自分の無力さと、絶望の証でしかなかった。彼らにとってはこの飛行機に限らず、最初からこの世のすべてが絶望に向かって突き進んでいたのです。私たちは飛行機の末路を思い、救いようのない暗澹たる気持ちになりますが、その絶望の淵に立つ事でやっと彼らと同じスタートラインになった、とさえ言えるかもしれません。事件を調査し克明に分析して、「その温度差こそがこの事故を引き起こしたのだ」と言うのは簡単です。でもその温度差を実際に「感じさせる」ことは、本当に難しい事ですし、本当はそれこそが「伝えなければならない真実」なのかもしれないのです。

 あるいは管制官と上司のやり取りにやりきれない思いを抱く人もいるかもしれません。市井の人たちは結局ヒーローにはなれなかった、というところに無力感を感じるかもしれません。「だからテロリストは断固叩くべきなのだ」という安直なスローガンがどれだけむなしいか、その現実の重さに打ちひしがれるかもしれません。そこには涙も感動もありません。でも、おすすめの映画、でした。

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