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2006年8月11日 (金)

キングス&クイーン

Story_07

「キングス&クイーン」見てきました。公式サイトはこちら


今日実は「旅芸人の記録」見てきたんですが、どうにも話が大きくて感想がまとまらないので(^_^;)先に最近一番「うまさに感心した」映画を紹介させて下さい。

 これは、何というか「映画ならでは」の人物描写でした。題の通り、キング(父)とクイーン(長女)の人となりがメインで描かれていくのですが、いわゆる説明的なせりふや描写には一切頼らず、そのかわり情景から点描に至るまであらゆる映像を駆使してじっくりとその内面をあぶりだしていきます。なので、まるで実生活で人とだんだん知り合いになっていく時のように記憶が積み重ねられ、そこに現実的な大きさが感じられます。映画の長尺としてはとても長いんですが(二時間半)、この不思議なエキセントリックさを内に秘めた2人の行動に何とかして意味を見出そうとして(笑)どんどん彼らの内側に踏み込んでいくのです。抽象的な映像はひとつもないのに、それが彼らのメタファそのものに見えてきてしまうくらい。その過程は生半可なミステリーより余程面白かったし、最後に父が突きつける最後通牒と、それを呑みこむ長女のしたたかさは、彼らをそこまで見てきたからこそ、本当に圧巻、でした。

 そして唯一言葉で説明されるのが「エピローグ」なのですが、これが長女の2番めの夫の真の姿を垣間見せている・・・ようでいて実は映画全体の主題を言葉にして出してしまっているんです。そういうものは普通、感得して下さい、と観客に放り投げる事が多いのですが、そしてこの映画なら放り出されても(ここまで長かった分・笑)誰も文句言わないと思うのですが、監督が隅から隅まで文字通りきちんと「監督」している証拠に、最後に実に鮮やかな詞書が映画を締めくくります。これも、昨今では珍しく丁寧なつくりだと思いますし、お馬鹿な私にはたいへん好ましい(笑)映画でした。ぶっちゃけ、これだけ年をとってくると目新しい事件や事象なんてそうはないので(おいおい)、取り上げられている題材そのものよりも撮り方、その裁き方の方にどうしても目が行くんですよね。そういう意味では、描きたいものがきちんと決まっていて、描きたいように自在に描いて描き尽くす事が出来るこの監督は、ありそうでない、ほんとに凄い実力の持ち主だと思います。あんまりいい例えではないかもしれませんが、島崎藤村や井上靖、大岡昇平などのような、地に足の付いた作風に素直にとてもこころ打たれました・・・出てくる人物がもっと現代的に「洗練」(笑)されていますけれどね。

 それと私は、今までどちらかというと苦手なタイプだった長女の2番めの夫(笑)にこの映画ではどういうわけか物凄く心魅かれました。それだけ深く、掘り下げて描かれていたのだろうと思います。彼に関するエピソードは、キングにもクイーンにもゼンゼン関係ないようでいて、実は彼ら2人が自分の座標を定めるために、とおりいっぺんの男では到底なしえない特別な座標軸を提供してくれてます。それは映画としてとても上手いと思うし、そのやり方も(他人事だからかもしれませんが)とても素敵でした(笑)。

 長編小説が好きな方には、なじみのある世界なんではないでしょうか。映画より読書、という方にお勧めして、感想を語り合ってみたくなるような映画でした。

 

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