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2006年8月 1日 (火)

デッドマン

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今回の、BOW30映画祭人気投票で見事第1位に輝いた、ジム・ジャームッシュ監督、ジョニー・デップ出演作品です。2日間で計4回上映されたのですが、チケットも当日すでに残りわずかでした。
えっとですね、私が当日ものすごく驚いたのは、若いおしゃれなお兄さんが、彼女連れて見に来ていた事。女の子の方はとってもかわいくきれいにおしゃれしているし、明らかにデート、なんですけど。差し出がましい事を言うようですが、これははっきり言ってデートで見に行くような映画じゃありません。私は当時これをレンタルして気に入ったので、別の本屋のビデオコーナーで買ったんですが、もちろんアダルトコーナーで、しかもピンクじゃないので隅のほうに「食人鬼」とか「殺戮の森」とかいうオドロオドロしい題のキワモノと一緒に並べられていて、よく知る店員さんが、普段ホラーもオカルトも見ない私に「大丈夫ですか?」と念を押してくれたのを良く覚えています。有名な映画ですからネタバレしてもいいと思うんですが、そして私自身ももう暗記するほど見ましたから、今回初めてスクリーンで見るといっても心構えは出来ていましたが。それでも大迫力の画面で青姦ならぬ青天口淫を見せ付けられ、ギャグでも怨念でもなく、まるでただの障害物のように生きた人の首がグゥンと掻っ切られ、道端の小石ほどにも敬意を払われず無造作に死体の頭が踏みつけられ、こっちを向いた頭がぐちゃりと踏み割られて鼻から血が吹き出す・・・シーンを見た後、例えば連れて来てくれた男の子に「すっごく面白かった!!」とか言ったら、さすがに人格疑われませんかね(^_^;) この映画に出てくるジョニー・デップの演技は本当に素晴しいですが、ファン、という人を誘う時も一応「どのジョニーが好きか」確認したほうがいいかもです(笑)

 では何故私がこの映画だけはDVDでも持っているかというと、人格疑われようとなんだろうととにかく大好きvvである事の他に、実は資料として、なんです。私がボランティアでやっている翻訳の、元原稿を書いているアメリカ人は、(主にメソジスト系の)クリスチャンだという括りがあるだけで育った環境も教養も生活レベルもばらばらです。ところが不思議な事に、キリスト教の文章のはずなのですが、教義よりもさらに深く根付いている(^_^;)彼ら独特の行動規範、人生哲学みたいなものがどの階層にも共通してあって、そのキリスト教からの逸脱を、本部と連絡取りながら加筆訂正しないといけない。日本のクリスチャンは世界のクリスチャンに比べると、教義としてのキリスト教を自分達に都合よく書き換えたりは「しない方」なので、銃を持ち問答無用で隣人を撃ち殺すクリスチャンなんて想定外なんですよ(笑)。
 しかしそれがこの映画を見ると納得できる。都市生活を円滑に送る知恵としての「キリスト教」ともうひとつ、「荒野に一人で放り出された時のための教え」を彼らは常にしっかり抱え込んでいるんですが、この映画が描いているのは後者です。そしてその荒野の方は実はさまざまな形で現代人の心の中にも年々広がってきていて、最近はちょくちょくそれが発動するようになってきている。9.11の後なんて、今まで見た事もないくらい教会の活動が熱心に支持されていたんですが、それは彼らが、自分のうちに渦巻く衝動を必死で抑えようとしていたからにすぎない、と海外のクリスチャン達は見ていました。そうしないと本当に、一切の感情を排除した、単に自分が「生きるための殺戮」という、すさんだ乾いたつむじ風が発生する。そこには美学もロマンもエロスも偏執も一切なく、ただ大自然の災禍の一部分と化した人間が、覚めた目で、殺戮を行うだけ。どんな人間にも殺人の衝動はあるものですが、それがアメリカでは彼らの国民性、あの大陸での彼らの存在意義、というところにまで色濃く影を落としている点で、異様、なんです。自分のうちのつむじ風をまだ御しきれずにいる若い男性諸氏がこの映画に強烈に共感を覚えるのも、だからとてもよくわかるのですが、やがてそれが自分のうちにある一過性のものではない、およそ手に負えない類の闇だとわかって、その深さ重さにうちのめされると思います。

 でもアメリカ人はそれを抱えていく。
  まさにこの映画に描かれている通りの世界を、時々ふと覗き込みながら、首を振り振り前に進んでいく、のが彼らなんだろうと思います。


 

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コメント

ひとりで観たんですが、映画を知らない人と観ると説明に困る映画だなと思いました。

投稿: 黒桃 | 2006年8月 1日 (火) 23時41分

おおっいらしていたんですか!
この映画祭期間中、実は私、かなりの確率で西島秀俊氏をお見かけしているんですが
「デッドマン」の時もふつ~に並んでチケット買っていらっしゃいました(笑)・・・お会いになりましたか?

>説明に困る
そうですよね、なんか突然イキナリ凄いもの見せつけられますから、
ご存じない方には説明しといた方がいい気もするんですが(^_^;)、
その意味を問われると更に困り果てる映画でもあります
・・・奥が深いv

投稿: contessa | 2006年8月 2日 (水) 23時30分

いえいえ、映画が公開になった時に
観に行ったんです。
ひとりで行って良かったと思った映画は
これが初めてです。

投稿: 黒桃 | 2006年8月 5日 (土) 00時21分

おお、失礼しましたm(_ _)m
公開当時は、見にいきたいなぁと思っているうちに子供が生まれてしまいまして(笑)、でも当時既に私の周りでは相当話題になっていましたよ。
一人で見に行った人がほとんどでした、確かにvv

投稿: contessa | 2006年8月 5日 (土) 06時52分

contessaさん、こんにちは。
先日はTBとコメントを頂きありがとうございました。
当ブログのオダギリさん関係を別のブログに移転中だったものでお返事が遅くなってしまいました。申し訳ございませんでした。
contessaさんの「デッドマン」の記事、とても興味深く読ませて頂きました。
そして凄く納得させられました。
これからもお邪魔させて頂きたいと思いますので宜しくお願い致します。

投稿: sora | 2006年8月10日 (木) 11時53分

コメント有難うございました。
そしてお引越し、おめでとうございますvv
こちらこそ、これからもあちらでもこちらでもどうぞ宜しくお願い致します。

映画の感想、いつも映画とほとんど関係ないことばっかり書いていてほんとに申し訳ないですが
同じ映画を見ている人そのものにあまりめぐり会わないので(笑)
読んでいただけてとても嬉しかったですv有難うございましたm(_ _)m

投稿: contessa | 2006年8月10日 (木) 16時14分

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昨日「BIG RIVER」のパネル展を見に行って何故か今、無性にジャームッシュの【デッドマン】が観たくなっています。 「BIG RIVER」の数枚の写真と予告を観て(予告しか観ていないのに/汗)「デッドマン」のモノクロの世界に浸りたくなっています。 実は私にとって「デッドマン」は時に無性に観たくなる映画なのです。 まず主演のジョニー・デップがとても良いのです。 彼はオダギリさんの次に好きな俳優(と言うか最初にファンになったのはデップの方が先でした/笑) 彼の演技はいつも淡々とし過ぎている・... [続きを読む]

受信: 2006年8月 1日 (火) 18時10分

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