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2006年8月15日 (火)

夏アニメ(2)ブレイブ・ストーリー

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 これは、原作とは別の意味で、かなり子供にお薦めの映画でした。原作読んだ事のない大人の方にも是非お薦めします。公式サイトは写真からどうぞ。

 原作は作者の宮部みゆきさんが、ゲームにのめりこむ子供達に「ゲームより面白いものがある」と見せたくて書き始めたものです。ですからのっけから子供達になじみの深いゲームの世界がこれでもかと出てきます。そこだけでも本当に並のゲーム小説にはないさすが!と思える迫力なのですが、宮部さんはその最後にもう一つ別のテーマを提示します。「では何でゲームやっちゃだめなのか」という事です。そしてそれについて実に真摯に考えた部分を特に取り出したのがこの映画です。

 スクリーンの向こうはゲームという異世界。一般のゲーム世界の理屈をなぞって描き出されたこのゲームの「不思議なルール」によって、子供はいつもの感覚でゲームをしながら実は「現実世界の実態」をいやおうなしに見せ付けられていきます。さすがに大人は途中でその寓意に気づきますが、それでもこのあたりは原作でもかなり骨太なところなのに、全く説教臭くなく「ゲーム」という設定をうまく生かしていて、映画の言わんとしているところがよく伝わってきます。ほんとうに世界は願えば変わるのか。それは実はボタンを押せば先へ進める都合のよいゲームと同じく、自分をなぐさめる為の都合の良い想像でしかないのではないのか。しかも実際に願いがかなわない事もある。願いが叶わなかったその時、ゲームならリセットすれば終わってしまうが、現実にはその自分を投げ出すわけにはいかない。最後に自分を引き受けるのは自分しかいない。その時「それでも生きていこう」と思える事が、本当は一番大事な事なのではないか。それが「勇気」なのではないか。
 大人の側から言えば、「君達がこの世を変える」と教え続ける大人自身が実は、いずれはわかる現実に蓋をしてしまっていて、実際の現実とのギャップにぶち当たった子供から真っ先に勇気と希望を奪ってしまっているという事実に気づかされます。ほんの少し前まで、右肩上がりに願いをかなえて「行かなければならない」という大人世代の共通認識だったものが、いまやゲームの世界同様片手落ちの一面的なものとなっている。その中では想定外だった、今までは蓋をしていた「叶わなかった時」を生き抜く力、それこそが今や現実の人生にはとても重要なものとなっている。しかしそれについて語る言葉を大人は果たしてどれほど持っているでしょうか。明るい未来は子供に託して、後は野となれ山となれ、なのでしょうか。

 原作の宮部ワールドからは割愛されてしまった部分が多々あります。しかしテーマを原作の第四章に絞り込んだことで、この深遠な主題をきちんと子供の世界に送り届ける事が出来ていると私は思います。一緒に見ている大人は更に更に考えさせられる事が多いでしょう。そういう意味で、大変お勧めの映画です。

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