« 嫌われ松子の一生 | トップページ | 「オダギリジョー・オールナイト」 »

2006年6月 1日 (木)

初恋

324630view010「初恋」試写会で見てきました。公式サイトはこちら




宮崎あおいさんと小出恵介氏、2人で作り上げた映画でした。これはもう、この2人の映画です。
 私はこの三億円事件と前後して生まれて、しかも3歳位で神戸に移り住んでしまったので、当時の雰囲気とか、具体的な時代の「記号」とか、まったく知りません。で、「三丁目の夕日」の時も(まだ見てないけど)思ったのですが、当時を知る人は、これ見てどう、思われるんでしょうか。それが一番に知りたいです。本当に何も知らないくせにエラそうなことを言うと自分でも思いますが、私はこの映画のセットにも、音楽にも、小道具にも、全く60年代の空気が感じられなかった。置いてあるもの、使ってあるものの時代考証はきっと間違っていないんでしょうけれど、ちょっと前、60'sと銘打たれたファッションや音楽が再ブームになってましたが、それを「昔はこんなでしたよ~」といって「ハイ」と持ってこられたような、そんな感じしかしなかった。たぶんBGMとライティングのせいじゃないかと、今ない知恵絞って考えているんですが、何ていうか、布のプリントの柄の鮮明さにも、モルタルの壁のぼこぼこにも、確かに当時と同じように痩せてはいる役者の体のラインにも、サイドストーリーの演技にも、ところどころに21世紀が覗くんですよ。で、気持ちが途切れる、っていうか見ていて、見てはいけないものを見てしまったように落ち着かなくなるんです。

 ところがそんな中で、あおいちゃんと小出氏が居るその場所だけが、周りから切り取られたようにタイムスリップしてました。この2人は本当に凄かった。ひょっとするとあおいちゃんの髪型とか靴下の長さとか、小出氏の着ていた物の中には、考証を外れているものがあったかもしれないんですが、にもかかわらず、私が見た事もない筈の40年前の匂いが確かにそこに感じられた。40年前、三億円事件があったのならこの2人もいたんだと、その時代と、歴史と、まるで等価の重さで、この2人はそこに存在していたんです。そしてその当時の人の恋愛感は今の私達とはかけはなれたものであるのに、きっとこうだろう、そうなんだろうと、2人の表情を見ているだけで、その気持ちの動きが、細やかな襞が翳りが、心にふわりとすべり込んできて、それがとてもあたたかくて。
 最後、あおいちゃんは号泣するんですが、それがわかっていなかったのはあおいちゃんだけで、観客は多分全員察している事、です。でも、それがわからないのが10代、というものだし、三億円よりはるかに大事なものを大切に抱えていられるのが10代、なんだと思います。その崇高さに手も触れられないでいる、小出氏の思いも。

 映画の主眼は最初から最後まで三億円事件とその背景であり、およそロマンとはかけ離れた武骨でゴリゴリした映像が続くだけです。でもこの映画のタイトルは「初恋」だと、私も思います。ありきたりの男女の関係では決してなしえない、それが彼らの初恋だったからこそ、できた、事だと、思うので。

|

« 嫌われ松子の一生 | トップページ | 「オダギリジョー・オールナイト」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/103190/10353593

この記事へのトラックバック一覧です: 初恋:

» 「初恋」宮崎あおいが様々な表情を見せる [soramove]
「初恋」★★★★オススメ 宮崎あおい、小出恵介主演 塙幸成監督、2006年 時代は変化し続けている、 振り返って「あの頃」を思い出す時、 個人の記憶と大衆の記憶には たぶんズレがあるだろう。 映画の舞台となった1966年から70年の頃、 その頃を象徴す...... [続きを読む]

受信: 2006年6月13日 (火) 07時56分

» 初恋 [東京ミュービー日記]
初恋 監督:塙幸成 出演:宮崎あおい/小出恵介/宮崎将/小嶺麗奈ほか 今日は休み。 昨日は休みなのに出勤だったので朝から出かける。 計画的に1日が終わると気持ちいい。 我ながら完璧なスケジューリング。 欲しいものが全て買えた。 満足。 で、その流れの中... [続きを読む]

受信: 2006年6月14日 (水) 22時17分

» 【劇場鑑賞62】初恋 [ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!]
私はあの三億円事件の犯人かもしれない。 あれから40年もの月日が流れているのに、 私の喪失感は今も消えない。 それは心の傷に時効がないから・・・ 60年代。 時代は何かを求めて蠢いていたあの頃。 私は狭く孤独の中で生きていた。 あなたとなら、 ...... [続きを読む]

受信: 2006年6月14日 (水) 23時10分

» 映画のご紹介(141) 初恋 [ヒューマン=ブラック・ボックス]
ヒューマン=ブラック・ボックス -映画のご紹介(141) 初恋-宮崎あおいのアイドル映画ではないけど、 彼女のファンでない人は、 最後まで見通せないだろう。 主演の宮崎あおいは、1985年生まれの21歳。 4歳で子役とし....... [続きを読む]

受信: 2006年6月15日 (木) 07時22分

» 初恋(映画館) [ひるめし。]
あなたとなら、時代を変えられると信じていた。 CAST:宮崎あおい/小出恵介/宮崎将/小嶺麗奈/柄本佑 他 ■日本産 114分 今年は宮崎あおいyearなのかしら? もう今年に入って彼女の主演している映画はこれ含めて4本目かな?それに加えて朝ドラもやってるし、10月にはまた映画が公開されるじゃないですか!? がんばってますね〜。たぶん映画業界の人達がほっとかないんだろうな。 でも「NANA」の続編の出演は渋ってるみ... [続きを読む]

受信: 2006年6月15日 (木) 13時50分

» 3億円強奪を描いた「初恋」見てきました [よしなしごと]
 実際あった昭和の事件3億円強奪事件。そんなことは僕にとってはどうでもいい。宮崎あおいさんの最新作初恋を見てきました。 [続きを読む]

受信: 2006年6月22日 (木) 23時19分

» 初恋 [シネクリシェ]
 60年代後半という政治の季節のまっただ中に放り込まれた若者たちの焦燥感、葛藤、そして挫折を描いたものですが、68年に発生した三億円事件をそ [続きを読む]

受信: 2006年6月28日 (水) 06時00分

» 初恋 [お萌えば遠くに来たもんだ!]
観てきました。 <新宿武蔵野館> 監督: 塙幸成 脚本: 塙幸成 市川はるみ 鴨川哲郎 1968年、12月10日に起きた「三億円強奪事件」の実行犯は18歳の女子高校生だった。 宮崎あおいをキャスティングした時点で「勝った」映画デスね。 孤独な高校生だった“みすず”が、確かな「居場所」を得ていく度に輝きを増していく、その変化が素晴らしくって! そして、事件を境にせっかく掴んだはずの「居場所」... [続きを読む]

受信: 2006年6月29日 (木) 00時16分

« 嫌われ松子の一生 | トップページ | 「オダギリジョー・オールナイト」 »