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2006年6月 4日 (日)

舩橋淳監督の映画感

 小次郎さんの所でお教え頂きましたが、テアトル新宿のイベント情報欄で、舩橋淳監督が「ビッグリバーに向けて」というコメントを載せておられます。こちらです。このコメントが、監督自身の作る映画とリンクするにはあと10年くらいかかると思いますが(^_^;)、カオスの中に生まれつつある萌芽としてお読みになる分には、面白いかと思います。

 まだ監督30才ですから仕方ないとは思いますが、この文章からは、世界の入り口に立ったばかりの青年のような青さと、それに対峙するすべとして自分の内なる「洞窟」と外部への「憧憬」しか持てていない焦りが、如実に感じられます。監督が外を見る目にはまだ自分の言葉でしか構築されていない「フィルター」がかかっており、またその一方で、見る眼鏡としての「カメラ」に監督自身が圧倒されています。それが、現場においてカメラと現実の間を「創作」する勇気を奪うのでしょう。たぶんそれに本人も気づいていているからこそこうして焦っているのでしょうし、私も、成長の速度は人それぞれ、でいいんではないかと思っていますが。

 出来上がった映画を観ると、監督が「洞窟」だと思っている場所から生み出された映像には、巧まずして監督自身のアイデンティティーがにじみ出ています。それは監督自身によって後付的に構築された映画観とは別次元の、監督の知性と感性と感覚が今までの人生をかけて掴み取ってきたものです。それが鍾乳洞のように滴り落ちてくる、その豊かな一滴、一滴を、できるならばこれから先は是非大事にしていただきたい。同時に、まだまだ振れ幅の広い、立ち位置の定まらない監督のこれから歩みの杖として、その滴りにかくも強烈に色を成している監督独自の「日本人的叙情性」について、是非ご自身の理性を駆使して精査検分して頂きたいと思います。映画好きなおじ様たちは、今時こんな古典的な映画論によりすがっている若い青年がいると知ったら、きっと迷惑な(笑)シンパシーを寄せてくるでしょうが、でも理論は古くても、監督のよって立つ所は似て非なるもの・・・だと私は信じたいから、です。

 私は、監督がこのまましばらく自分の世界に絡めとられてがんじがらめのまま迷路を彷徨っていても、それはそれで、いい事なんじゃないかと思います。そういう形でしか、つかみ取れない、抜け出せない人というのは確かにいるからです。今、象の足に触れはじめた監督の手が、いつか描き出してくれる「象というもの」に私は期待しております。

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コメント

こんにちはー。
先日、映画 『ビッグ・リバー』を観たのですが、ロード・ムービー好きの私としてはとても気に入りました。来週旅に出る私としては、野宿もアリかなぁなんて勇気付けられたりして?、美しい風景と妙な人間関係模様を楽しみました♪
そして、こちらへ来て、監督のコメントとやらをつい読んでしまいました。そしてちょっと頭を抱えてしまいました。ヴェンダースが『ランド・オブ・プレンティ』をつくったような気持ちだったということですか??ううむ、何者なんですか? 自国でくだらない娯楽映画をつくり続ける人よりも断然すばらしいとは思うんですが、「現代アメリカの縮図のようなこの作品が、そんなことを考えるきっかけとなってくれればと思う。」と本気で公言されているというのはちょっとビックリ・・・。そんな主旨は全然伝わってきませんでしたけど・・・。ただその風景が撮りたかったとかいう方が私は好きかな・・。^_^; 
と複雑な思いにかられたのですが、映画そのものは好みでした。オダジョーの佇まいもよかったです。
contessaさんの映画そのもののレヴュー記事を発見できなかったんですけど、どこかにありますか?

余談ですが、6/14付の記事の写真は私向けでした。来週アンダルシアに行くものでー

投稿: かえる | 2006年6月17日 (土) 15時40分

かえるさん、TBと感想、本当に有難うございます。

記事が探しにくくて本当にすみません。
書いてる私自身も困っておりまして(殴)それでブログ内検索窓をつけております。
もし不具合があれば是非お知らせ下さい。

>ただその風景が撮りたかったとかいう方が私は好きかな・・
そうですね。私は実は試写会の更に前に、ココで書かれているような監督のコメントをベルリン国際映画祭の記事で読んだのですが、映画を見ている時は、そのコメントはすっぱり頭から抜け落ちていましたよ(笑)
監督がいろいろ言いたい気持ちもわかるのですが、私は舞台挨拶で、この監督が「クラッシュ」や「ミュンヘン」を見ていたということの方にむしろびっくりしたくらいで。
かえるさんのように、明るく不思議なロードムービーとして楽しんだほうが、監督の良さが生かされているように私も思いました。

投稿: contessa | 2006年6月19日 (月) 20時31分

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» 『ビッグ・リバー』 [かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY]
美しい風景を堪能。旅の醍醐味を満喫。それだけでいい。 バックパッカー哲平とアリとサラのアリゾナ州モニュメントバレーでの出会いと別れ。アメリカの広大な砂漠が背景のロード・ムービー。映画館の大きなスクリーンでこれをで観ずして何を観る。この風景が大好きなんだもの。空のブルーと砂漠の色のコンビネーションがたまらなく好き。視界いっぱいに広がる果てしない空の青さにウットリ。視界を遮るものがないって最高。こんなふうに旅をしてみたーいと思うばかり。 ポスターのイメージ通りの映画だった。それは予想通りのタ... [続きを読む]

受信: 2006年6月17日 (土) 15時00分

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