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2006年5月25日 (木)

雪に願うこと

Main2「雪に願うこと」見てきました。公式サイトはこちら



 前評判高かったですが、これほどとは思いませんでした。ストーリーや背景から想像される、いわゆる「お涙頂戴もの」とは全然違います。希望に満ちた終わり方ではありますが、「やったーこれですべてがうまく行く!」式の薄っぺらなヨロコビはどこにもありません。でも、っていうか、だからこそ、イイんですね。その良さを観客に伝える事が、存分に出来ている映画だと思います。この原作を映画に、といの一番に手を挙げていたらしい相米監督も、きっと今頃あちらでウン、ウンと頷いているんではないでしょうか。

 お涙頂戴に落ちなかった一番の理由は、主人公の伊勢谷氏に対峙する、いわゆる悪役にあたる人が、どこまでも厳しく立ちふさがっていたことに尽きると思います。演じていたのが山崎努氏と佐藤浩市氏。正直、見終わったあと「監督ずるいな~」と(笑)思ったくらい、映画の勘所は全部この2人で背負って立っていました。だいたい、本当だったら尾羽打ち枯らして郷里に逃げ戻ってきた青年なんて、人の同情を引いてやまないかわいそうな存在の筈なんですが、いるだけで圧迫感のある山崎氏と佐藤氏を前にすると、間違っているのは伊勢谷さんだとしか思えないんですよ(笑)。冷静に考えれば、すぐ暴力に突っ走る無骨な兄だったり暴利をむさぼる高利貸だったりして、生き方どこか間違っているのはむしろあちらなんですが(大爆笑)、でもその力強そ大きさ重さは実はそのまま、伊勢谷氏にとっての「現実」なんですね。それが逃れようもなく厳然と伊勢谷氏の前に立っていたからこそ、彼は立ち止まってじっくり考える事が出来る。映画の中で、この2人が「形」にしていた現実の大きさは本当に凄かった。そしてそれこそが、この映画の重さを決定付けていたと、思います。ほんと凄かった。っていうか、今更ながら、さすがでした。

 伊勢谷さんも、最後までこの糸の張り詰めたような青年を、緊張感を途切れさせる事なく熱演していましたし、吹石さんなんて、アノ井崎脩五郎氏も絶賛したv騎乗ぶり。そしてつい先週、華麗でスタイリッシュな銀行強盗やっていたかの人は、もう出てきた時から本当に地元の人にしか見えなかった(笑)。香川照之さんと2人並んで写ってた時は、しゃべれば字幕が出そうな勢いでしたよv 椎名氏とか津川氏とか、大俳優を惜しげもなく使っていまして、映画がしっかり出来上がっている分、個々の芝居のうまさも堪能できます。

 泣ける映画、感動させられる映画ではありませんが、本当にいい映画です。こういう、観客に媚びずに「貫き通す」映画が全国展開するようになるなんて、素晴しいと、思いましたです。文字通り、撮り切った根岸監督に拍手です。


 

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コメント

記事拝見し、まさに共感したため、TBさせていただきました。こちらの記事もご覧いただければ幸いです。

投稿: t@shi | 2006年6月15日 (木) 23時53分

TBとコメント、有難うございました。
先ほどお邪魔させていただきました。

香川京子さんの名前が出てくるような映画好きの方に
共感していただけて光栄でした。
またどうぞ宜しくお願い致します。

投稿: contessa | 2006年6月16日 (金) 02時37分

相米監督、「あ、春」は、
あまり興味ない役者たちが
皆素晴らしくて良かったです。
特に冨司純子など、とても良くて
見直しました。
今度はまだ未見の「風花」を
観てみる予定です。

投稿: t@shi | 2006年6月16日 (金) 07時24分

コメント有難うございます。
お返事遅くなりましてすみません。

「風花」はひょっとすると
小泉今日子さん以外、あまりご存じない俳優さんばかりかもしれないのですが
いわゆる「人情の機微」を、昔とは又違った現代人の視点で、実に丁寧に細やかに追い続けた佳品だと思います。
ご覧になった感想を、楽しみにしております。

投稿: contessa | 2006年6月19日 (月) 20時18分

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