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2006年5月 7日 (日)

グッドナイト&グッドラック

Goodluck 「グッドナイト&グッドラック」見てきました。公式サイトはこちら。なお、今更言うまでもないことですが、ここのレビューは見に行った日に書いているわけではありません。そこまで自分の行動を明かす必要もないと思いますのであしからず。

 これは、とても私の好きなタイプの映画、でした。宣伝や予告編を見ていると、英雄伝説賞賛ストーリー、最後は大拍手ですっきり爽快、みたいなのを期待しますが、そんなに観客サービスはしていません。結果どうなるかわかっているのですから、観客も一緒になって快哉を叫びたい・・・所ではあるのですが、むしろ「エド・マロウ斯く戦へり」的な、ドキュメンタリータッチのドラマです。一般に知られた糾弾成功ストーリーの裏で、実際戦う当事者は、そんなに単純にすべてを勝ち負けで割り切れるモノではないわけで、その様々に色なす心象風景を実に丁寧に追ったのが、この映画です。
 マッカーシー議員ほど強面ではなくても(笑)会社の上司や取引先の担当者、あるいは単に友人・知人と、自分を守るために一度決着をつけなくてはならなくなった経験は、誰にでもあると思います。そういう時、例え傍目には完膚なきまでに相手を叩きのめした・・・ように見えても、スーパーマンが敵をやっつけるのとは違って、実際には人間のすることですから勝ち負けがはっきりすることなどめったにありません。どちらかが名を捨てどちらかが実を捨て、よくて痛み分け、です。その時に、では何を捨てて何を取るのか、その事に関して自分の中の優先順位は何なのか。オジサン風に言えば、その選択でその人の人間がわかる、ということになると思いますが。
エド達も、世間ではこれ以上ないほどの賞賛を浴びながら、そこにたどり着くまで、あるいはたどり着いてから、失ったものの大きさに、手放しでは喜べないでいます。でもそれが本当だろう、と私などは思うんですね。その賞賛の陰に隠れた彼らの苦悩と苦渋の選択を、それに直面した時の彼らの思いを、じっくりと見せてもらって改めて彼らの偉大さがわかる。マッカーシー議員に関しては、後の時代の者から言わせてもらえば「自滅」という側面はぬぐえないと思います。決してエドの舌鋒だけで全アメリカの論調が変えられていったわけではない。しかしその発言を選択していく過程で、そこでエドが「何を大事にしたか」というそのprincipleが次第に明らかになっていくにつれ、事の本質が今のメディアに繋がってくるのがわかるのです。映画の宣伝コピーでは、まるでブッシュがマッカーシーの再来であるかのように思わせぶりに煽っていますが、そんな短絡的な話ではありません。エド・マロウの時代も今も、メディアの最大の敵は、メディアが自分で自分を縛る「自重」と言う名の責任逃れ、なのです。それが、ジョージ・クルーニー監督自らが演じるプロデューサーとエドの「四面楚歌」の中で浮き彫りにされます。そこまで突っ込んだからこそ、このドラマは描く価値があったのだと私は思います。

 もうひとつ突っ込むなら、それでもこれで正しく軌道修正が済んだのは、まだアメリカに二大大国のひとつとしての「善を担う」自負があり、自信があり、それを支える豊かさがあって、「正しさ」に対する価値観もゆるぎなくひとつしかなかったから、です。その大切な「当時のアメリカ」という背景を、監督は、ジャズであらわしました。ラインナップを見ると、そこにとてつもない監督のこだわりが窺えますが(ジャズあまり聴かない人にもこのサントラは「名盤」としてお薦めします)、そのおかげで、どんな映像よりエピソードより雄弁に「良きアメリカ」が綴られていきます。それはもう、是非設備のよい映画館の特等席で「聴いて」下さい、お願いします、という感じ。そのまま目をつぶって音に酔いしれたくなりますが、まぁそこは我慢して(笑)。

 

 単純明快なエンターティメントにもできる話をあえてそうはしなかったので、インパクトは弱いし評価の分かれるところだと思います。が、私はこの映画はとても好き、です。DVDの発売が今から楽しみですv

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受信: 2006年5月31日 (水) 21時25分

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