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2006年5月16日 (火)

僕の大事なコレクション

Illuminated 「僕の大事なコレクション」見てきました。公式サイトはこちら
夕べ、実は久しぶりに凄い長電話をしまして(^_^;)、そこで大変に薦められて、12時間後にはもう見てました、と言う映画。(さて問題です・何時まで電話してたでしょう・泣)

 良かったです。私などが軽々しく良かった、などと書いてはいけないような気さえする今年一番の秀作。これ見るまでは、私の今年の映画ベスト5は全部邦画だったのですが、あっさり抜かれました。そしてこれも(とあえて書きますが)映画の宣伝の仕方(特にポスター)、邦題のつけ方間違ったと思います。たいへんに重い映画。すべての事から一切目をそらさず、起こった出来事にすべてに対して深い畏敬と尊敬の念を込めて、祈りにも似た誠実さで全編描ききっています。それなのに、見終わった人は、とてもあたたかい、まるで癒されたような感じを受けるのです。まったく関係ないのに、見ていた自分までが抱きしめられ赦され解き放たれたような、そんな安らかな心持ちになれます。
 そして、これだけ褒めちぎっておいて何ですが、先に公式でストーリーをお読みになって下さい。そしてもし↓こういう方面にあまり知識のない方でしたら、ちょっとショッキングに過ぎるエピソードがあるかもしれません。苦手な方はどうかご注意下さい。写真の3人、おじいさんと孫と依頼人のアメリカ人(イライジャ・笑)が尋ね人の旅をする映画なのですが、登場から口を極めてユダ公(!)とののしるキケンなおじいさんに、孫が、この↑写真の、旅の途中の食卓でふと、「え、じいさん、ウクライナって反ユダヤだったの?」と聞きます。だってお兄ちゃん、ウクライナって、ウクライナっていえばさ・・・で、その話を孫に全くしていない「ユダヤ嫌い」のじいさんって・・・・え、まさか、ひょっとして・・・・私なんかもうこのあたりから胸が詰まってグゥーッとなって泣きそうでしたが。座席に座っている以上一切逃げることは許されず。最後まで見せつけられます。つまりはそういう映画です。何だあのポップな水色と黄色のポスターは!と思いますよ・・・心構えが出来てないと押しつぶされそうに思うかも。

 キャストが3人とも好演しています。イライジャ・ウッド目当てで見にいらっしゃる方は、彼の役者としての力量を「指輪」以上に堪能できると思います。この映画の中では、彼はもちろんジョナサンという一人の人間ですが、同時に、まるで指輪物語の中の指輪のように、ある種抽象的な意味合いを背負わされていて、それを常に体現し続けなければならない存在なんですよ。この彼の存在の「浮揚感」のおかげで、映画全体が、この種の他の映画とは一線を画した、非常に昇華され止揚された深いテーマにまで引き上げられていると思います。凄いです。
それからお兄ちゃん(笑)。ウクライナ在住のヒップホップラヴァーという設定ですが、ウクライナですから、やっぱりアメリカは遠いです(笑)。その彼の英語は(今回字幕秀逸でした!)英語覚えたての勘違い愚息にも聞かせてやりたい「身につまされるような」イタイタしさ(たどたどしいとはまたベツのイタイタしさです・笑)。本人実際バリバリのロックミュージシャンで映画の背後に流れる曲も歌っているそうですが、でも、この人もうまいです。ウクライナ語でおじいさんのことを、どうも「ディー[dzi:]」というらしいんですが、それが私の耳には「じぃ、爺、」って呼んでいるように聞こえるんですよ(^_^;) で、その「じぃ、」が、すごくあたたかでやさしい。手の早いv爺様なんですが、孫が彼を大好きで心の底から尊敬しているのが一発でわかる「じぃ」。それが、この映画を最後のところで支え救っているのだと、今になって思います。
 そして問題の(笑)おじいさん。ウクライナでは有名な名優さんだそうですが。この人がいたからこそ、この映画は冗長な説明を一切省いたんだな、と思えるくらい「すべてを語る顔」でした。刻一刻とこちらの心に刻み込まれてくるおじいさんの心象風景の変化。それがこの映画の骨子なんですが、この人の顔には映画全体が映りこんでいる、そんなシーンがいくつもありました。素晴しいです。

 それと。音楽が、画面にピタリと合っている、というのも心地よくのめり込めた原因でした。そんなの映画だから気にしなくてもいいんですけどね。コマ割りにドンピシャリ、は当たり前、前のシーンで人が刻んだ拍と、次に出てくる音楽の拍がぴったり同じでそれでシーンが繋がっていくという凄技v あと映像で人が歩いていればその歩く拍、きっかけが出ていればその拍にあわせて(つまりだんだん遅くなったりもするんですが、それにもぴったり沿って)BGMが流れるんですよ。もう小気味いいくらい隙がない。びったり。爽快!これはできれば是非是非他の監督にも見習っていただきたいと思いました。

 うちから一番近い映画館では今度の金曜まで公開なんですが、その後全国展開するそうです。私の、今年イチオシです。長電話の相手のいつもながらの慧眼に心からの賛辞を送りつつ、必見!

ひとつだけネタバレ
ジョナサンは大変な蒐集癖です。途中、それは遺伝?(笑)と思うシーンがありますが、そのすぐ後に。「そんなものまでとっとくのか」と聞かれたジョナサンが「こうしておかないと、忘れそうだから」と言うんですよ。映画の中ではそれだけで、割りとさらっと流されていますが、私はその言葉に、国を持たず家を持たず1000年彷徨い続ける流浪の民の、その根無し草のような「喪失感」を突きつけられたような気がしました。私達には絶対わからない感覚、なだけに、余計に突き刺さりましたです。

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コメント

TB有り難うございました。
この映画の音楽、とてもよかったですね。私も気に入りました。それからなんといっても良かったのが、サミー・デイビスJr.Jrかな(笑)

投稿: Boh | 2006年5月17日 (水) 00時29分

Bohさん こんばんは。初めまして。
コメント有難うございました。

Jr.Jr.は、名犬でしたv
英語で"Come here!"って呼んでも全然来ないで、ロシア語で呼ばれるとすっ飛んでくるあたり(笑)根性あります。犬の口の中とか、歯並びとか、初めて見ましたし(こらこら)

Bohさんはたくさん映画ご覧になっているのですね。またTBつけさせていただくと思いますが、どうぞ宜しくお願い致します。

投稿: contessa | 2006年5月17日 (水) 21時08分

contessaさんのレビューを読んで、早速見てきました。
確かに「僕の大切なコレクション」という邦題から受けるイメージとはかけ離れた印象の作品ですね。
おじいさん役の俳優の演技に曳きつけられました。話が進むにつれて変わっていくおじいさんの顔、表情。科白がなくても、その表情だけで気持ちが伝わってきて、正直言って
胸がつぶれそうでした。

投稿: Yuko | 2006年5月18日 (木) 00時02分

yukoさん

コレ読んで見に行って下さったなんて感激ですvv有難うございました~12時間伝播、続いていますね(笑)
それにしても何だか重い映画でホントにビックリしました。

予測された事実がある意味
予測どおりの形で容赦なく暴露されていって、
それでもおじいさんの顔から目が離せないまま、
いつのまにか自分もおじいさんと同じ気持ちを味わっていて・・・
知識として皆が知っている事を心の奥底にまでまっすぐ届けるのは
本当に難しいことだと思うのですが
この胸蓋がれるような気持ちの重さを考えると
映画なら、それが出来る、と言うことになるのでしょうか。

素晴しいおじいさん、でしたし
いい映画、だと思いましたです。

投稿: contessa | 2006年5月18日 (木) 20時56分

予告を見ただけでこれは!と思ってました。
良くて良かったです。

投稿: 黒桃 | 2006年5月19日 (金) 10時02分

黒桃さん
さすがですね・・・

お馬鹿な私はあの予告を見て
ポップで明るい「おかしなおかしな自分探しの旅」映画だと思い込んで
ものの見事に押しつぶされましたよ。
はっきり言って、修行がタリませんでした。
ああ・・・・・

投稿: contessa | 2006年5月19日 (金) 21時59分

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