« お花見vv | トップページ | ウィン・シャ エキシビション »

2006年4月 4日 (火)

夢二

Photo加入しているCATVで「鈴木清順特集」と銘打って放送していた、3つ目の作品。いわゆる大正浪漫三部作の最後、でもあります。1991年製作。

実は前2つはちゃんと録画したのですが、これだけは3月ひと月かけて都合4回全部失敗しまして(^_^;)。ただ、これはDVDになってすぐ買った古いディスクがありまして。今回結局それを何十回目かで見ております。今日も実はこれを見ていて、愚息を稽古場に迎えに行くのを忘れました(^_^;)一度見始めたら本当に止められない、ものすごくものすごく好きな映画です。


この映画は、三部作の中では割と評価の分かれる作品です。「夢二」と題が付いていて、映画の中にも実際に竹久夢二関連の史実がたくさん出てきますので、「伝記的夢二」を通して大正浪漫を描くのだと思ってしまうと、夢二らしからぬ夢二に面食らうと思います。でも、例えば私には、夢二の描く絵、というものは、決して心骨削って一心不乱に魂魄注ぎ込んだもの、ではなく、彼の人生の片鱗がたまたま絵となって零れ落ちたもの、のように見えます。たっぷり墨をふくんだ筆から一滴、夢二も知らぬうちに落ちた一滴。だとすると、この映画は、いわばその一滴の元となったであろう、墨と穂先と筆とそれを持つ手をあますところなく描きこんでいる映画だと思います。世に「竹久夢二」という名で呼ばれる人の、一部であり全てである、その「一滴」にかかわったであろう全てを。

沢田研二扮する夢二が、宮崎萬純さん扮する彦乃と駆け落ちしようとしてままならない。夢二が先へ金沢に行くと、山の湖で山狩りをしている。鬼松という殺人鬼が、妻を寝取った脇屋(原田芳雄)と妻を殺して逃亡中なのだと教えてくれたのは脇屋の妻(毬谷友子)。夢二はねんごろになりますが、実は夢二自身も脇屋とは知り合いで、東京で夢二の自画像を巡って決闘沙汰が御預けのまま、なのでした。脇屋は殺されているわけですが、もし生きていたら夢二は二重の意味で殺されますから、怯えて仕方がない。もっと言えば、実は脇屋の妻も、嫁いで来る前夢二と恋に落ちていたのでした(その花嫁衣裳の片袖を夢二が持っている)。そこへ東京から、伊藤晴雨の元を逃げ出したお葉が来る。彼女が見つけた新しい仕事場はカフェというのは真っ赤なうそで、実は生きていた脇屋が別宅をカフェに仕立てて夢二をまんまと呼び寄せたもの。画家の稲村御舟(坂東玉三郎)も表れ、3人で鬼松山狩りを見物ついでに脇屋妻の待つ本宅へ行きます。しかし脇屋妻は、頑として脇屋を夫とは認めない。行き場を失った脇屋はしかし偶然駅で、夢二を追ってきた彦乃を助け、彼女を人質に脇屋家に名乗りを上げ、祝宴を催すついでに、夢二と御舟に妻を描かせることを思いつきます。祝宴の裏で戯れ描く脇屋妻と夢二。そこへ脇屋への復讐に燃える鬼松が乱入します。2人にあてられた鬼松は2人を道連れに屋敷外へ出て、手伝いを頼んで首を括ります。「このまま逃げよう」という夢二に、約束どおり絵の描かれた片袖の花嫁衣裳を着たままの脇屋妻は「着替えてくるから。必ず戻ってくるから」とその場を去ります。「待てどくらせど来ぬ人を・・・」、誰を待っているのかも忘れてしまった夢二は呆けたように薄野原に立ち尽くします。

あらすじはこんな感じですが、話の筋には乗らないところで、目に焼きついてはなれない映像が、それこそ数え切れないほどあります。先にあげた事情で、前2作と比べて評価はわかれる所なのですが、私はその一つ一つのシーンのいちいちの完成度の高さ、役者さんたちのぎりぎりの爛熟度の高さを含めて、この作品が一番「好き」です。

私はいろんな事情から、実はこの映画を見るまでは、人が美しいと言うものを美しいと言い、美しいと感じるであろうものを予測して美しいと言うだけで、自分から何かを美しいと感じる心はいわば封印同然でした。が、この映画を見てから、まるで解き放たれたように自分がきれいだと思い好きだと思ったものだけを美しいと言えるようになりました。それほどこの映画の美しさがことごとく「好き」だったんですね。つきつめれば最後は好き嫌いの問題だという事だと思います。私は自分が何が好きか、という事を、この映画を見てからはとても大事に思えるようになりました。
映画のなかで、たぶん一番好きな作品です。

|

« お花見vv | トップページ | ウィン・シャ エキシビション »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/103190/9433024

この記事へのトラックバック一覧です: 夢二:

« お花見vv | トップページ | ウィン・シャ エキシビション »