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2006年4月19日 (水)

リバティーン

Liberteen_1 「リバティーン」観て来ました。公式サイトはこちら





予告編で、鼻が朽ちかけたジョニー・デップの顔が映っていて、それが怖くて正直あまり見に行く気になれませんでした。キネ旬の評も散々だったし。でも、私にはこれは相当面白かった。行ってよかったです。
 オダギリ氏は「僕が女だったら妊娠しますよ」と評していましたが、正直、お馬鹿な私は妊娠しているヒマはありませんでした。神学哲学聖書解釈17世紀英文学史・・・もうなけなしの持てる知識のありったけを総動員して(涙)、字幕を見英語も聞きつつ、常に頭はフル回転状態。そうでないと、ジョニー・デップ演ずる主人公の詩人が、何に目覚め何に対抗し何を目指していたのか、すぐ見失ってしまうのですよ。最初それは字幕の字数制限のせいかと思っていたのですが、英語も似たようなもの。何でそんなに随所で「言葉足らず」なのかとパンフレットを見たら、これ、もともと舞台劇だったんですね。それを映画にしていく過程で、説明的な長いせりふや言葉のやり取りは、だんだんカットされていったのでしょう。少なくともある程度以上の教養ある欧米人にとって、この映画の言わんとするところの背景は耳タコ、でしょうしね(泣)。

「妊娠しそうに」(笑)男の色気が溢れている、と言われると、私達はこの後公開される「カサノヴァ」のような酒池肉林をv直ちに思い浮かべますが、これはそれより更に100年くらい前の話です。貴族の女性をさらって妻にしたり、4文字英語を口の端にのせたり、ということすら大顰蹙の時代。更にいうと、清教徒革命の後、いわゆる王政復古の時代、イギリスはイタリアのルネッサンスのような神と人との関係性の「健全な革命」をついぞなしえずに終わります。このリバティーンの時代が、そのチャンスであったのかもしれないのですが、映画に出てくる通り、その根底をガシガシとゆすり、ゆさぶりをかけ・・・ただけで終わってしまいます。ですからそこに例えば現代にまで受け継がれる人間性の解放、生の賛歌といった積極的な主題が出てくるわけではなく、むしろ何とかして既成の価値観に「突破口」を見出そうと、文字通り「もがき苦しんでいる」姿そのものが主題であり、またそれがこの時代の英国知識人であり主人公なのです。
ですので全体に地味です(笑)。ボーっと見てると、ただの甘ったれ貴族の放蕩三昧にしか見えません。そしてせりふの端々や主人公の詩人の「試み」の数々には、後の時代につながる萌芽もいくつか示されているのですが、それもひょっとしたら見る人が見れば、数十個単位で出てきていたのかもしれませんです(泣)。

そんな中途半端な観客の感想でほんとに申し訳ないのですが(涙)、私から見た見所は、前半の、場末の大根女役者を一大女優にトレーニングしていく過程と、後半の、梅毒に身を冒された詩人が、いかにも17世紀神学的解釈により段階的に魂の解放を求めていくその過程です。
前半の、この大根役者の役は、役者冥利に尽きる、これ以上ないほどのおいしい役です。彼らの会話を演劇史として辿ってみるだけでも面白い。私はこの役をオダギリジョーが演る所が見てみたかったですし、オダギリ氏がその場に自分を置いて観た感想が「妊娠」なんではないかとひそかに思っています。確かにジョニーの色香はむせ返るほど濃厚でクラクラするのは間違いないんですが(笑)。
後半のその場面は、実はもうかなり顔も体も朽ちていて、しゃべることも難しい段階ですが、顔と体の表情で、刻一刻と移り変わる詩人なりの「魂の救済」の変遷を見事にあらわしていきます。最初に書いたような理由で、せりふにたよる所はどうしても不完全燃焼気味なのですが、役者の演技で見せる所は、本当に鬼気迫るものがあります。前半の男の色気とあわせ、ここのジョニー・デップはすごいとしか言いようがない。見る前にあれほど怖かったジョニーの顔から、むしろ片時も目が離せなくなります。ジョニー・デップ目当てに行くなら、美しさ色香は言わずもがな、今までの中でも1、2を争う珠玉の演技が、全編とおして堪能できますので、それだけでもお薦めしますです。

今回は、ここでいつもお世話になっているYukoさんとご一緒して頂きました。Yukoさんとでなければ絶対見に行こうとか思わなかったので(笑)、本当に感謝しています。
そしてさらに午後は、別の映画も見たのでした・・・後半へ、つづくっ!!!



 

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コメント

私もキネ旬の映画評を読んで
「これは・・・またこんどにしよう」とスルーしてました・・・

妊娠せずにすんで良かったです

投稿: 黒桃 | 2006年4月21日 (金) 00時10分

黒桃さん
いつも本当に有難うございます。

>キネ旬の映画評を読んで
「シリアナ」の時もCIAのマワシモノなのか?(笑)っていうくらい評価低かったですし、やっぱり見に行ってみないとナニが当たるかわかりませんね。

今回も、とにかくジョニー・デップはむちゃくちゃよかったんですよ。今まででも1,2を争う婀娜っぽさ(><)
私はアホの子でダメダメでしたが、ちゃんとした人なら、きっと映画の世界に引きずり込まれて、妊娠してたと思います・・・たぶん(笑)。

投稿: contessa | 2006年4月21日 (金) 00時45分

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原題:The Libertine 初めと最後の言葉、私が好きか?・・こんな私でも・・それでも私が好きなのか、どうか私を好きにならないでくれ・・自由奔放に生きた孤独な男の物語。 第二代ロチェスター伯爵(ジョニー・デップ)は、詩人にして舞台作家。新人のエリザベス・バリー(サマンサ... [続きを読む]

受信: 2006年5月 4日 (木) 12時35分

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