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2006年3月24日 (金)

好きだ、

sukida
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 この映画を撮ったのは、石川寛監督です。長くCF畑で活躍されていた方で、「tokyo.sora」に続き本作が二つめです。そしてこの作品は2005年ニューモントリオール国際映画祭で最優秀監督賞を受賞しています・・・と、まぁいつもならレビューに関係ないコウイウ事は私は書かないのですが。
 唐突ですが、私がこの映画を見て一番深く思ったのは「ああ、オダギリジョーはこの映画には出られない」という事、でした。オダギリ氏がその年に似合わず体現している、何百本のビデオと共にためこんだ「古い映画」その製作者達のテリトリーから、これほどきっぱりと決別している映画はないからです。これは実は当のオダギリ氏自身が出ている「ゆれる」を撮った西川監督にも感じることです。
 正確に言うと、こういう映画を撮れる「まっとうな生活をしてきたまじめな人」が映画を撮る時代になったと言うことです。アウトローや「でもしか」映画人では、こんな映画は撮れません。だからこの映画に出られるのも、演技手段の積み重ねで自分を化かし続け、その虚像を競ってきた人たちではありません。卑小も過称もせずただまっとうに自分の大きさだけで生きてきた、その人生の積み重ねだけで勝負する「ごく普通の」西島氏であり、永作さんであり、宮崎さんであり、瑛太くんのような人、なのです。そういう人が、つまり井筒監督の世代の映画人の対極にある人が、映画を撮るようになってきた、のです。

 そうすると映画の作法としてどう変わるか。まずこの監督はCF出身ですから「凝縮」の手法に長けています。30秒間のフィルムに盛り込める情報量が、今までの映画監督と桁違いに凄いです。もちろん商業フィルムだったわけですから自己満足とは無縁の世界、丁寧に、きちんとこちらを向いた絵が切り取られていきます。ですから、30秒30秒が、まるで今までなら一本の映画になったくらいの質と濃さで現われてきます。トータルすると映画何百本分になるのてしょうか・・・・それがこのたった1本に収まっているのです。
 それだけの仕事量をこなせる人は、それだけの仕事を今までに成し遂げてきた人だけです。たとえが悪いですが、夏休みの宿題を毎度毎度8/31にやっていた人には、7/20から営々と宿題に取り組んできた人の完成度は想像すらつかない。それは努力でカバーできる範囲をはるかに超えた、そもそもの出来が違う仕事量なのです。で、ぶっちゃけそういう人は今までなら映画畑なんかに流れて来ないで、就職したり企業家になったり家を継いだりして社会を動かす原動力となり、その能力を発揮してきたわけですが、今30才前後の人って大学卒業の頃、大変な就職難で「大学出てもすぐは就職しない」というのが、選択肢の一つとして出てきた人達なんですよ。だから「そういう」人も映画に自然に流れてくることの出来た貴重な世代。彼らは最初から、人生投げてもいないし斜めに見てもいないし、映画という表現方法に正面からまともに挑んでいるし、それもあっという間に消化し尽くして自分のものにしていってます。さて、今居る監督の何人が「束になって」かかればこの世代の映画人に勝てるのか。メンバーは慎重に選ばなければならないでしょうね。

 この映画に関して言えば、「日常の些細なでき事に意味と喜びを見出していくことに人生の意義がある」という主題そのものは、旧態依然としたものです。特に、単館映画が好きな人にはお馴染過ぎるくらいお馴染の主題です。でもそれが映画においては「たった1本」ですみからすみまで描きつくせてしまう程度のものであるということを提示して魅せた、あるいはこの映画を、つらい現実に対する逃避所ではなく、むしろ今居る自分の現実を誇らしくまぶしく見つめる事が出来る人の為の場所として提示して魅せた、という意味で、今までとは決定的に違う映画、なのです。

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