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2006年3月14日 (火)

ナルニア国物語/第1章ライオンと魔女

20051121009fl00009viewrsz150x「ナルニア国物語/第1章ライオンと魔女」見てきました。

公式サイトは こちら


 子供がそろそろ春休みなので、そっち系の映画がこれから続きます。で、これは正直ここに書くつもりは無かったのですが(笑)、あんまりにも良かったので一言。

 まず、満を持して作った、という製作スタッフの意気込みが伝わる、細部まで行き届いた細やかな神経に拍手です。はっきり言いますが、指輪やハリーの轍を踏まないよう、その失策を研究し尽くしています。ファンタジーの文法もわかっているし、原作とのすり合わせも慎重、映画としてのリアルも世界を壊さずはめ込まれているし、何より「挿絵」という、映画企画段階から背負わされている一種独特の存在意義について、役者も含めたスタッフが最初から割り切って、理解して、そこに誇りを持っている。そして、これが1番スゴいと思ったのですが、挿絵という宿命を甘受する決意の表れとして、あえてC.S.ルイスの宗教哲学、あの独特の歴史観には踏み込んでいないのです。

 ナルニアを読んで、ルイスを知った大人ファンには、自分の愛する物語が子供だましになったようで失望させられるかもしれません。でも、それは別の映画を待つべきだと私は思っています。今「ローズ・イン・タイドランド」という映画をアノ、テリー・ギリアムがvv撮っています。ですからサイコです(笑)。「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」を貫く、ルイス・キャロルの非情な神学を映画にしようと思ったらやっぱり「視覚に訴える」のが1番だ、と私も思いますのでモノスゴク楽しみ、です。でも、それを子供に見せようとは思わない。それはある程度世間についての知恵も着き、哲学にも宗教にもおぼろげながら自分のスタンスが出来てきた頃に「アリス」を読んで初めてわかることであって、そうでない、もっと小さい時は「アリスという記号」に親しんでおくだけでいいのです。その2つを1本の映画で撮ることには全然意味がない、と私は思うんですけれどね。

 それと、昨日ここに書いた「陽炎座」と表裏のような話になりますが、このナルニアは原作読者の頭の中の世界に、ですからもう溢れんばかりに血肉を注ぎ込んでいきます。特に出色の出来だったのが、「雪の女王」と「タムナスさん」と「戦闘シーン」です。ファンタジーにリアル感を与えるのは、実は主役の役者ではありません。主役は読者が感情移入して読んでいるので、どんな姿を当てはめてみても実は明確に像を結ばないんです。でもその主人公を支える、あるいは敵対する人物は、話を理解するための「事象」としてある程度正確に「セッティング」されるものなので、ですから映像でも、彼らが見事立ち上がれば、物語世界は枠組みが与えられ、動きと流れが生まれ、そのおかげで人(その他)の営みが現実のものとして「あぶりだされて」いくという仕組みになっている。そこをこの映画の監督スタッフは物凄くよくわかっていました。↑2人の役者がこの映画を引っ張っていたといっても過言ではないくらい、ハードな高度な演技ばかりが立て続けに要求されていましたが、2人ともよくその「掟」を理解して、要求以上の迫真の演技で見事映画の質を引っ張りあげてました。それはもう、これ以上は望めないというくらい素晴しい女王とタムナスさんでした。
それと「戦闘シーン」は「戦闘のリアルさ」ではなく「臨場感」に明確に的を絞ったのが良かった。物語世界、という立脚点から考えても、ビジュアルとして戦闘が与えるインパクトの限界から考えても、映画の世界を崩さずに奥行きと重さを与えるには思い切った、良い選択だったと思います。だからこそ、「結局すべては灰燼に帰したのだった」というありがちな簡単な結果には終わらず、一つ一つのシーンに意味が生まれ、うちの愚息にも「ロンドンの空襲」と「砕石投下」が繋がっているのがわかる(笑)ように撮れる。撮ってる人は大変だったと思いますが、私としてはカップヌードルのアノ30秒CMと比肩する緊張感と緻密さに大拍手、でした。

 子供向け映画で、大人の領域には踏み込んでいませんが、それでも大人も、大人として楽しめると思います。宜しければ是非。

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