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2006年3月24日 (金)

ツィゴイネルワイゼン

chigoineru 1980年、鈴木清順監督作品。
この作品は公開の仕方が大変特殊だったんですが、そのあたりの事情が"tender"というサイト様のこの ページに大変詳細に残されています。良ければ是非、ご参照下さい。





 これも京都に行く前に見てました(^_^;)。清順監督作品の中ではこれが1番好き、あるいはこれが1番わかりやすい(笑)と評判の作です。話は、破天荒なドイツ語教師原田芳雄と、友人ドイツ語教師藤田敏八が、大谷直子さん、大楠道代さん(藤田妻役)を巡って思いを残し続けていくもので、最後までちゃんと破綻せずに終わります。鈴木清順監督の代わりに暴れているのは原田さんかなぁ(笑)大正末期の耽美なエロティシズムを、人間の内側からの必然として描き切った佳作です。
 藤田さんと原田さんが旅先で遊んだ女郎と、そっくりの女がご大家から原田さんの所へお嫁に来ます。遊び女に似ていると言われ、野卑な(汗)原田さんにぞんざいな扱いを受け続けたそのお嬢様は、やがて女の子を残してスペイン風邪で亡くなります。と、乳母にと雇われてきたのがいつかのあの女郎(大谷さん一人二役)。その頃、妻の病んだ妹から、大楠さんと原田さんが一緒に見舞いに来て、相思相愛の様子だったと告げられた藤田さんは、普段が普段だけに原田さんが信じられず(汗)、そのうち持ち前の放浪癖が首をもたげた原田さんは、気ままに旅するうち、旅先で野垂れ死にます。残された大谷さんを藤田さんは気にかけ、大谷さんも、生前原田さんが貸した本にかこつけ藤田邸へやってきますが、そこにそれ以上の進展はなく、原田さんと大楠さんの話も妹の妄想だったと後でわかります。

 そりゃあもうこの映画をタダモノではなくしているのは、タダモノではない原田さんです(笑)。清順監督の実写メタファ?!に敢然と立ち向かえる存在感はそれは凄いものがあります。この人は映画がない時どうしているんだろうと(笑)余計な心配してしまうほど「日常」からかけ離れています。そして清順さんが1番嫌ったのは、日本の私小説の伝統余波とも言うべき、映画の中に「日常」を持ち込む事、だったのかもしれません。リアリティとか、現実の重みなんていうこざかしい道具立ては、わざわざ映画の中に興さなくていい。ここは別世界なんだし、これがこの世界の「現実」なんだから、と事あるごとに「つまらない映画」に反発しているように見えます。それ面白いです・・・か?なんていう凡人の戯言には耳も貸さず(笑)、人が入った後の玄関をずらして中を見せ、そのまま玄関ではなく「さっきは壁があった場所」を突き抜けて人を帰したり、人を小ばかにしたように(笑)似た女が偶然何度も現われたり。でもそういうことをやっても全然薄っぺらな感じがしないんです。そこに、リアルに近づけようとか、逆に何かを壊してやろうとかいった、浅薄な意思が微塵もない。荒唐無稽であるからこそ、「これはこれでいいんだ」というその一言だけがまるで天地創造のような重みで掟となり世界を作る。ストーリーとして納得し、目で追って楽しめる分、端々に現われるそのご託宣の一々が鮮やかに映像世界に際立ちます。

大楠道代さんの演技には、もうぞくぞくしっぱなしでした。
この人の名前を見ると、大塚楠緒さんを思い出すのですけれどね(笑)。この映画で見た大谷さんがまさにそんな感じでした。






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コメント

コメント拝見致しました。
この映画は親の好きなものの一つで、小さい頃から訳も分からず見てきて、まだ今になってもよく分からず状態なのでコメントに悩まされた一作です(監督の言葉も何となくピンと来ず)。
半ばはぐらかしたも同然の感想を評価してくださってありがとうございました。

投稿: 前ヶ瀬もりか | 2006年4月 2日 (日) 21時31分

前ヶ瀬さん

わざわざこちらへまでコメント、有難うございました。
おうちの方が見ていらしたのですか。
そうですよね、公開後もう20年以上経ってますから、「古い映画」の部類ですよね(^_^;)

実はこの映画について前ヶ瀬さんが
「印象に残った」と書いておいでのアノせりふを手がかりに、
私も視点を変えて、もう一度見てみたんですよ。
そうしたら、何だか確固たる「生」の代表格大楠さんのパワフルさがこっちに迫ってきてむせかえるようでした・・・・面白い。

わからないのは私も相変わらずですが(笑)、次見たらまた違うことを感じそうな気がしますvv

投稿: contessa | 2006年4月 2日 (日) 21時56分

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製作:1980、日本 監督:鈴木清順 ドイツ語の学者としてごく普通の生活を送っていた主人公は、ある日浜辺を散歩中にかつての学友、中砂糺(なかさご)と出会う。 彼は主人公にサラサーテの音盤『ツィゴイネルワイゼン』を貸したことがあり、親しい仲であった。 中砂糺の異様な性癖と、倒錯的でデカダンスな嗜好は主人公やその妻、さらに中砂糺の後妻と彼らの娘まで巻き込み、現実とも虚実ともつかない玄妙なる世界へ誘うことに。 個人的評価:★★★★★ 内田百?原作の『サラサーテの盤』をベースにして同作者の作... [続きを読む]

受信: 2006年4月 1日 (土) 21時44分

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