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2006年3月24日 (金)

「ゆれる」試写会

「ゆれる」何度目かの試写会の1つに、昨日行って参りました。
公式サイトが出来ています。こちら
先日子供と「ウォレスとグルミット」見にシネ・アミューズCQN行きましたら、早くも予告が上映されてまして。それと同じものが↑この公式でも見られます。

 重く厚くどっしりとした映画です。無駄な間や、観客に下駄をあずけるシーンなどひとつもなく、明確な意思を持って、現すべきものがすべて過不足なくきちんと表現されています。その隙のなさ、正攻法で王道まっすぐな「正しさ」が、映画全体をとても端正で重厚なものにしています。考えさせるのは最後だけ、そこまでは実に丁寧に、説明責任は製作側がすべて完璧に果たしています。ですから観客は、暗喩を探したりマニアな符号にひそかな喜びを求めたりする必要は全然なく、ただ見たままに感じるだけでいいのです。そういう意味では、大手製作会社がロードショーにかける大作映画と似たところがあるかもしれません。「どんな人にも開かれた」話でありながら、重くずっしり残る手ごたえ。普段単館映画など見ない人の方が、ストレートに感動できるかもしれません。
 あるいは見たままに感じようとすると衝撃で吹っ飛ばされる事もあるかもしれません。ある明確なきっかけを境に、まるでブラックホールに吸い込まれるかのように、目の前の画面の質量がどんどんどんどん重くなっていき、抗えず瞬きもせず見守っているそのこちらめがけて、いきなりバズーカが撃ちこまれてきます。その時の、その登場人物の心情がそのまま等身大の重さでいきなりこちらの心に撃ち込まれて来るのです。バズーカ砲、バンバン来ます。ここで私の個人的な感覚を言っても比較にすらならないと思いますが、それはもう「エリ、エリ、ラマ、サバクタニ」という映画で「音」で受けた衝撃を、「映像」で受けた、そんな感じでした。そしてそのバズーカまでもが、実に正しくしっかりと真正面からまっすぐ、撃ち込まれてくるのです。
 奇を衒わず、斜にも構えず、悪びれることなく正面突破を試みた結果、白日の下に晒されるのは、人の心の奥の奥です。真っ暗で底なしで、たどり着いたらそのまま逃げ出したくなるような闇。その闇には残酷な事に生き血すら通っていて、でもだからこそ、どこかにぬくみが残っていて。映画は、そこにかすかな希望を照らして終わります。

 役者話をすると、映画の中では香川さんとオダギリ氏の関係は兄弟で、それも関係してるのかもしれませんが、常に香川さんが球を投げてオダギリ氏が打つ、という感じです。それもオダギリ氏、凄いのは、「ここではセンター前にポテンヒット」とか「ショートは抜くけどサードが取れるゲッツーコースで」とか、普通では考えられないような監督の注文を(笑)次々にこなしてヒット打ってます。舞台挨拶で20代の集大成と言ってましたが、確かにその飛ばしているヒットの中に、五代クンも西島刑事もタケシもテツも里見先生も春彦も、斉藤一も(!)みんな居ます。<余談ですが、このオヤジしか出ない絵面を少しでも軽やかにしようという意図なのか(え)ファンから見ると 映画的必然性とは別次元で、特に前半、無駄に(笑)美しいショットが多いです。明らかにそう、撮っています。もうオダギリファンはオロオロして映画に集中できないくらい美しい。DVD絶対買いです(笑)>・・・で、そうやって、映画の間中、投げ込まれてくる球を持てる力のすべてを出し尽くして変幻自在に打ち返し続けるオダギリ氏は、最後に特大のホームランをかっ飛ばします。それはもう目の覚めるような、花火のように大きくて力強いホームラン。ところがそれをゆっくりと見送る香川さんが、最後に振り返って、オダギリ氏を見るんです。それがもうその一瞬に、40年間生きて来た香川さんのすべてが出ている。最後の最後に、ああ、この映画の主役は香川さんだったんだと痛烈に思わされる。ほんとに凄い一瞬。確かにそこまでの「関係性」はオダギリ氏のいうとおり、この二人でなければ構築できなかっただろうと思うほどに。



ネタバレは決してしないつもりだったのですが最後に一言だけ。
この予告の叫ぶオダギリ氏のシーンと、それから事前にさんざん取材されていた裁判のシーンは、実は 映画の中での扱いは結構あっさりしています。 大変な質量でずっしりとこちらに襲い掛かってくる、 凄いとしか言いようの無いシーンがその前にいくつもあって、 予告のシーンはその当然の帰結、として扱われているからです。山場というより〆。 ですからこのシーンだけを楽しみに見に行くと、ひょっとして肩透かしを食らったように思う方もあるかもしれません。できたら頭の中まっさらにしてお出かけ下さい・・・もちろん↑も是非忘れてv

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コメント

 初めまして。「ゆれる」試写の感想が気になってあちこちのブログ巡りをしてきましたが、バズーカ打ち込まれてしまいました。夏の公開がこんなに待ち遠しい作品はありません。
 少し前からロムさせて頂いてましたが、沢山の映画の話題も大いに参考になります。(子供に付き合うか迷っていたナルニアも行くことに決めました。プロフィールなどから伺える嗜好傾向に自分にリンクする部分を感じるので信頼感があります。)
 先日の漢詩も勝手に脳内再生して楽しませて頂きました。
 これからもよろしくです。

投稿: ELLE | 2006年3月25日 (土) 08時16分

ELLEさん、こんにちは
初めまして。書き込み有難うございました。
いつも来て下さっている由、本当に有難うございます。

映画の感想は人それぞれですので、書いても仕方ないかと思うこともあるのですが
こうして、「(嗜好に)似たとこがある」と言って下さる方に読んで頂けるのは、何より嬉しいです。
「ゆれる」は、↑に書きましたように、判り難い所など何一つ無いのですが、そこから受けたモノが大きすぎて、どう書いたらいいのか実は一晩呻吟しました。とにかくわたしの貧相な語彙の範疇をはるかに超える作品でした。

夏に、ご覧になったら、是非ELLEさんの感想もお聞かせ下さい。
また、これからもどうぞ宜しくお願い致します。

投稿: contessa | 2006年3月26日 (日) 05時52分

メールありがとうございました。
許可もらったので、この記事を僕らも使わせてもらいます。
いろいろ教えてくれて感謝してます。
僕をこのブログに連れてきてくれた巨大掲示板にも今は感謝してます。
当日はやっぱり無理ですか?
これからも頑張って下さい。
では失礼します。

投稿: 小田 | 2006年4月 4日 (火) 23時28分

小田さん

怒りはおさまりましたか(笑)
小田さんのお心遣いは本当に嬉しかったですよ。こちらこそ有難うございました。

当日は申し訳ない、まったく無理なんです。ご免なさい。
こんな所からですが、会のご成功を心からお祈りしています。
これからも頑張って下さい。

投稿: contessa | 2006年4月 4日 (火) 23時43分

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