« Big River | トップページ | 時効警察(7) »

2006年2月24日 (金)

スルツカヤの笑み

 今朝から見るたびに泣かされている、スルツカヤ選手の笑み、です。本当に、なんてこの人は強い人なんでしょうね・・・

 今回、荒川選手と村主選手がミスをしないですんだのは、私は一つにはリンクのせい、があったんではないかと思っています。トリノのスケート会場は、テレビで見ている私にもわかるくらい、制氷状態が悪いです。リンクの作り以前に、ちゃんとと掃除していないんじゃないの?レベルのガタガタの盤面。アイスダンスの時にも転倒者が続出して改善要求がなされていましたが、変わっていないようです。アメリカやロシアはスケート大国、小さい時から自分専用に磨きこまれたリンクで練習を重ねてきたスルツカヤやコーエンにとっては「滑ったことのない感触のリンク」だったでしょう。でも日本のスケート選手は、最近でこそチームを組んで効率的に強化していますが、以前はまったくの個人負担に頼りきっていて、営業の終わったあとの一般リンクを時間で借り受け、自分で全面制氷し、それからやっと練習していたのです。安藤選手あたりはもうわからないと思いますが、きっと荒川さんも村主さんも、トリノのガタガタの盤面なんて、コワくもなんとも無かったろうと思います。特に、とても苦労してスケートを続けてきた荒川さんは、あのリンクを見て感慨深いものすらあったかもしれません。あの場にいる誰よりも、彼女自身が知り尽くしていた、エッジの跡だらけのガタガタの盤面。彼女の金は、彼女自身は喜べても、このリンクでわずかなぶれも起こさず滑りきれる事の「意味」を知っている周りの人にとっては、本当に、胸がいっぱいになってしまう事だったと思います。

そしてさらに、スルツカヤ選手ですが。
放送中も紹介されていましたが、この人はここに来るまで本当にどれだけ苦労したか。そしてどれだけ本人も周囲も「金」を望んでいたか。ぶっちゃけ、メダルを取りたいだけなら30回の練習ですむところを、この人は病の体をおして50回練習しないといけない。一事が万事、そうです。でもこの人は、いつも屈託の無い笑顔をカメラに向けるんですよね。ガラス細工のように繊細だと言われるスケーターの心と体を、彼女自身の笑みが支えているような気がします。
そして今日も。あれだけ苦労してあれだけ努力してすべてをここに賭けて望んだオリンピックの最終滑走で、彼女は転びます。予定していたジャンプの半分も飛べなかったし、ステップも精彩を欠いて・・・演技中はともかく、終わったらリンクの上で泣き出すんじゃないかとすら、私は思っていました。そうしたら。下を向いていたスルツカヤは、ぱっと微笑んだんです。まるで「やっちゃった!」とでも言いたげに。
どんなにか欲しかった金メダルが、あれほど望んだ金が、目の前をすり抜けていった瞬間、それでも彼女は泣かなかった。本当に出来ることは全部やりつくし、努力の限界まで自分を追い詰めてきたからこそ、微笑む事が出来る彼女。どんな結果になってもそれが自分だと言い切れるくらい、限界まで練習に練習を重ねてきたからこそ、彼女が自分自身に贈る笑み。それを見るたびに、彼女の運を思いその無念を思って、弱い私はおもわず涙してしまいます。でも彼女は、泣かないのです。

強い人だと、思います。
人間ってここまで強くなれるのかと、畏敬の念さえ覚えます。
きっと今も、彼女はこの瞬間も、いつものようにカメラに向かって
屈託なく笑っているのでしょう。金は取れなくても。


|

« Big River | トップページ | 時効警察(7) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/103190/8820892

この記事へのトラックバック一覧です: スルツカヤの笑み:

« Big River | トップページ | 時効警察(7) »