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2006年2月 6日 (月)

ラヂオの時間

 先日、地上波で放映していたのを録画して、今日やっと見る事が出来ました。映画館にかかっていた頃、友人どころか親と妹にまで薦めて「あなたの薦めてくれた映画の中で、初めて面白かったvv」と皆さんに大激賞された映画です。元々は三谷幸喜さんが「東京サンシャインボーイズ」という劇団を主宰していた時かけていた芝居で、当時から傑作の呼び声高かった。ただしいかにも「小劇場の観客」が好みそうな内容なので、「笑いの大学」同様、映画化を危ぶむ声はありました。
 改めて見て、やっぱり大笑いして、ジーンと来て、所々泣けました。今一生懸命見ている(笑)時効警察とは違う、シリアスな笑いです。これは、小劇場の役者さんたちが三谷さんと練りに練った脚本を、映画の画面に合う大きな役者さんたちが見事に演じきったからこその、映画としての完成度の高さ、だろうと思います。この後に続いた「みんなのいえ」「新撰組!」「有頂天ホテル」を見る限り、この「ラヂオの時間」は絶対に三谷さん単独で書き得たものではありません。この映画に出てくる脚本家が、俳優やスポンサーや私情や事情によってさまざまに脚本を弄られていったように、三谷さんもサンシャインボーイズの劇団員に、この脚本について、相当あれこれ言われ突っ込まれけなされ叩かれたんだろうと思います。でもそのおかげで、一部の隙もない、完璧なせりふとストーリー展開になっている。各人物の心象風景も実にクリアに立ち上げられ「画面に映っていない人」が今何を考えているかまで、手に取るようにわかる。そして何より、登場人物全員に対し、三谷さんが心の底から敬意を表しているのが痛いほどわかる。三谷さんの無骨な、でも一途な、現場で働く人たちへの熱い熱い思いが、見ている間中、観客の胸をガンガン打ちまくるんです。

 それが、そこまで書き込めたのは、劇団員達のおかげです。DVDの脚本の所には、三谷さんの名前と「劇団東京サンシャインボーイズ」という名前が併記されています。本当に、これは劇団で作り上げた脚本だと思います。そして三谷さんは、そういう形で書くことで一番力を発揮できる作家さんなのではないかと思います。

 「12人の優しい日本人」が劇場公開された頃、三谷さんは自分達の劇団がどうして人気が出ないのか、本当に真剣に悩んでいました。それを隠そうともしない人でした。あれだけ心血注いでいい芝居を作り上げているのですから、大勢の人に見てもらいたいと思う、大ヒットさせたいと思う気持ちは当然、だと思います。そして当時、「どんな手を使ってでも!」って三谷さんがあの温厚なお顔で拳を握り締めても冗談にしか見えませんでしたが(笑)、あの時、本当に真剣に三谷さんは、ロードショー上映で大ヒットを飛ばすような作家を夢見ていたんだなぁと、最近とみに思い知らされています。

 「有頂天ホテル」の大ヒットで、宿願は果たせたと思います。今、三谷さんはどんなお気持ちなんでしょうか。いまさら「むなしい」なんていわないでほしい。その頂点のむなしさを知っているからこそ自分の道を突き進んでいるのが、三谷さんが有頂天に呼んだ、個性あふれる役者さんたちなのですから、今は彼らに背を向けてでも、目指したもののために頑張ってほしい。そしていつか、誰のためでもない三谷さん自身のために、この「ラヂオの時間」を越える脚本を独りで書き上げてほしい。それが「東京サンシャインボーイズ」主宰に最後に残された責任だろうと思います。



 

 

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