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2006年1月 8日 (日)

ブエノスアイレス(18禁)

「花様年華」について書いたら、この映画をほっておくわけにはいきません・・・の「ブエノスアイレス」。出来たのはこちらが先で、今見たら1997年公開。あ~もう10年近く経つのですね。。。

 この映画は題材をゲイに限定した恋愛ものです。「メゾン・ド・ヒミコ」」が男性観客にも受け容れられている今とは比べ物にならないほど、当時はゲイを扱っているというそれだけのことで、エラい拒否反応でした。主役のトニー・レオンなんて、アルゼンチンに着くまで映画の内容知らされず「騙して」連れて行かれたんだし、あの大作「覇王別姫」でお姫様を演じたレスリー・チャンがここでも受で出てるんですが、彼なんて撮影途中で帰っちゃったくらいw  でも、この監督が例えば男女について語るとすると、前述の「花様年華」になっちゃうんで、だからもっと火のつくような激しい感情むき出しの、切った張ったのやり取りを描こうとしたら、題材をゲイにせざるを得なかった・・・そんな感じ。王監督としては大いに必然性のある設定なんです。
 さらに言うと、2人は別れるためにアルゼンチンくんだりまで出かけているわけなので、既にお互いに相手の事を知り尽くし、言うこと成す事まったく遠慮がない。男女だったら絶対にこうはならないというような、本当に男同士の火のつくような言葉で相手をののしり、モノを投げつけ鏡をぶち割り、ベットを蹴り上げ相手をたたきつける・・・でも同時にそのすべてに於いて、その体が、彼ら自身の肉体が、声にならない声で「お前を愛している」と叫び続けているのが、手に取るようにわかるんです。ダンスをすればそのまま言葉を退け情をからませ睦みあう事もできる二人。でも職場にかけた電話に同僚が出ただけで浮気を疑い猛烈に嫉妬し昼も夜も問い詰め続けるレスリー・チャン。自分と再会するまで夜毎ウリをして糊口を凌いでいた事が許せず、相手がタバコを買いに外へ出ることさえ許さないトニー・レオン。トニーは最後にはレスリーのパスポートを握りしめたまま、居所を隠し、ひとりブエノスアイレスを離れる決意をします。

 「花様年華」のラストシーンを見た時、ああ、この映画は「ブエノスアイレス」と対なのだ、とはっきり思わされたのは、この映画でもトニーが、やはり思いの丈をレコーダーに吹き込もうとするシーンがラスト近くにあるからです。仲を疑われた(笑)職場の同僚が、悲しい思い出がすべて捨てられるという南の果ての灯台に観光で行く、といい、「何か捨てたい話があればこれに吹き込んで。」と勧めてくれます(公開当時、私はこの、声の色を感じ取るという繊細な青年が好きで好きでたまりませんでした)。メイキングによると、ここはせりふが無くトニーの感情の赴くままに任されていたそうで、本人も事前に色々せりふを考えていたらしいんですが。   本番になって、いざレコーダーを口に当てたら、トニーは、感極まって泣いてしまうんです。言葉にならない。涙しか出てこない。今、自分が別れよう、忘れようとしているその相手の事を思うだけで、涙があふれてきてどうしようもない・・・その頃レスリーも、あれほど縛り付けられるのを嫌がったそのベットの上で、トニーの帰りを待ちながら身を捩って泣き続ける・・・最後の最後まで、己が激情になすすべもなく弄ばれる2人。本当に美しいシーンです。

 もうひとつ、私が忘れられないシーンがあります。2人とも全編とおして喧嘩ばかりなのですが、ベッドの上で心を通わせあうひと時もあるんです。普段はけんか腰に言葉を投げつけるレスリーが、字幕では出ませんでしたが(^_^;)文字通りお姐言葉の猫なで語尾で甘くささやきます。で、さらにかたくななトニーの心を溶かそうと、彼の1番すきな体勢をとる・・・それが「後ろから抱きすくめる」というものでした。トニーは攻める方の筈なんですが、その時の表情がなんとも言えず柔らかで艶っぽい。。。彼の1番の魅力は、と聞かれれば、私にとってはこの時の、この満ちたりた色香でした。

 で、実は監督にとってもそうであったらしく。 「2046」の公開後に、雑誌で何とオダギリジョーと天下の王家衛対談企画、というのがあり。もちろんオダギリ氏はまったく歯が立たず逆に遠慮なく質問攻めにされてたのですが、そのやりとりのなかで。「後ろから抱きしめられるようなのが好き」と答えたオダギリ氏に、監督はあからさまに興味を示し始めます。結果、オダギリジョーのヰタ・セクスアリスは実にあっけなく日の本に晒されてしまいましたが(笑)。オダギリ氏は「花様年華、見ました」と言っていましたから、たぶん、↑こっちは見ていないのでしょう。見ていたら、監督がこのやりとりの中で、オダギリ氏のうちにかつてのトニー・レオンの色香を強烈に感じ取ったのがわかったと思います。鋼のように真直ぐでありながらどこかで庇護される事を求めてやまない魂・・・から、発せられる、同じ、匂い。  その象徴が、監督にとっては、あの、シーンだったというわけで。 監督は、2人目のトニーを、今も探し続けて居るのでしょうかね・・・・

 

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