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2005年5月24日 (火)

「三千世界の鴉を殺し」

標題は、伝高杉晋作作都都逸の冒頭部分、落語「三枚起請」の落ちとしても有名な一節です。「♪~主と朝寝がしてみたい」と続きます。
この唄の中では鴉は鶏のようなもので、朝になると啼く鳥、という扱いです。それから主というのは女郎の「客」ではなく「情夫」のほうです。はした金で女の部屋に上がりこみ客の合間を見ては抱き、あまつさえ何くれとなく女に貢がせる情夫は、女にとっては「間夫がなくてはこの世は闇」ではあっても、店にとってこころよい存在ではありません。たとえその色男が地回りに顔が利いても、たとえその男のおかげで女が艶と妖を漲らせていられるのだとしても、です。ですから他のどんなわがままは通っても、客を取った日も取れなかった日もいわば店の沽券にかかわる「主と朝寝」だけは難しいのです。
この唄の特長は、何といってもこのエキセントリックさにあります。「三千世界の」と高尚に始まった詞を「鴉」で俗に落とし「殺し」で更に突っころばし、主~から後はもうグダグダ、という、その腰砕け。血なまぐささえ漂う荒っぽさと、自堕落な脂粉の香が混じって、都都逸の粋や洒落からは程遠い、頽廃的な、重い空気を漂わせています。それが駄作と飛ばされもせずに今まで唄い残されているのは、「~してみた~イっと・・・」と言いながら立ち上がるであろう数多の女郎の背中に、自分を重ね合わせているからなのであり、まかり間違ってもその恋心への薄っぺらな共感ではありません。
今実は某局で「Tiger&Dragon(原題カタカナ)」というドラマをやっていて、そこに出てくる落語家の師匠が一生の持ちネタとして門外不出としているのが「三枚起請」なんですが、この落語の難しさも、まさにここにあります。三枚も起請文を書いて問い詰められ「熊野中の鴉が死んだって知った事かね」と開き直る女、そこには同情もせず憐みも寄せず最後に「主と朝寝が出来るもの」と言った時、「あははっ・・・ったくヨウ」と"自分諸共"笑い飛ばせるように、そこの所まで女と客に一体感を持たせつつ上手に話を転がしていく・・・のが難しいわけで。大学の落研あたりがやると、たいていなさぬ仲の悲哀がにじんできちっゃてつまんない噺、で終わります。つまりこの都都逸を「恋の告白」と取ってはだめなので、どちらかと言うと、付き合いも長く修羅場もくぐり、お互いを知り尽くした者同士だけに許される詮無い戯言、そこが好いた惚れたの本当の醍醐味、と言いたい唄なわけで。

長く書きましたが、それだけ私も都都逸の出来としては?がつくこの唄が好きなんです。というかこの暗く爛れた空気にすがるようにして話を書いたこともあってですね(汗)。ところが実は今日知ったのですが、標題が作品名となっているSF超大作ファンタジー小説があるんですね~しかも私が駄文を書く一年も前から今に至るまでまだ連載中!何でわかったかと言うと、うちの人形達用のある衣装屋さんが、某オークションに「『三千世界の鴉を殺し』風軍服」というのをお出しになったからなんです。私のイメージだとこの唄は着流し・・・(笑)というわけで思いっきり不明を恥じました。三千世界の鴉どころか宇宙大戦争なノリで戦う「主と朝寝がしたい」一途な男性カップルを愛でる話・・らしく(違っ)。ぐいんさあが、みたいな超大作だったらどうしようと思いつつ、ネットで見つけた文庫版の購入を迷っております(笑)。うー、真打ちとまでは行かないまでも、二枚目あたりで奮闘してくれていたらいいなぁ・・・・そのカップルvv

日本代表チームエンブレム。八咫烏は熊野の鴉です・・・

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